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読者の作品 048
2009/07/24
奈良県にお住まいの鈴鹿様から寄せられた
「学習机」
をご紹介いたします。
学習机を製作テーマとされる方は結構多いようですが、私にはまだその経験がありません。 私には子供が3人おりますが、私の父(子供から見ればおじいちゃんになりますが。)は孫が然るべき年齢になったら学習机をプレゼントすると決めていたため、作る機会がありませんでした。 但し私の場合には孫に購入してプレゼントではなく作ってプレゼントと考えていますので、そのうちにテーマとして出てくると思います。
以下に鈴鹿様が送られた写真とコメントをそのまま掲載してありますが、大変な力作でしっかりした設計図面を起こすことから始めて製作過程も豊富な写真を取っておられますのでじっくりとご覧ください。
学習机の製作
1.構想
娘の入学祝いにと、学習机を自作することを思いつきました。
VIC's DIYサイトと出会って以来、当面の目標としていたもので
す。 市販の学習机を見に行っては、サイズを測ったり
(それも
天板の厚さや棚板の奥行きなど、普通は測らないところ)
、引
き出しの構造を下からのぞき込んだりと、怪しい客でした。
また、メーカからカタログを取り寄せて、デザイン、構造、サイズ
の参考としました。
2.設計
設計は、デッサンメモ → もでりんv2
(mini-shopで購入した
ソーガイドにおまけで付いていたソフト)
→部品図はexcelと手
書きという手順で行いました。
設計および制作は、
フェーズ1:
机本体部
フェーズ2:
本棚部
フェーズ3:
脇机部 の3段階で行いました。
----- 以下の3面図の画像4枚は、クリックすると拡大いたします。 -----
もでりんv2による立体図と3面図です。 天板の幅は大きめの1200mmとした関係で、引き出しは3つにしました。脚のぐらつきを押さえるため奥および両サイドの下方に「桟」を入れましたが、前面横方向には当然「桟」を入れることができません。前脚の横方向へのぐらつきが気になりましたので、悩んだあげく、引き出し用の仕切り板をつなぐ形で桟
(立体図で緑色の部材)
を入れることにしました。 足もと奥には、本棚を付けました。
机本体の引き出しは、本体と分離して作図しました。同じ図面内に描くと、重なりなどが解りづらくなるので。
引き出しの設計は、VIC's DIYサイトで解説されている方法をそのまま利用しました。レールもVIC様推奨の新17Sシリーズを使います。
本棚部です。側板、背板、仕切り板は、曲線カットする予定です。
(図面には書けない)
また、仕切り板は可動式にします。
(数少ない工夫部分)
脇机部です。引き出し箱部分だけ、右側に出して作図してあります。
(前板は本体側にくっつけて表現してあります)
天板が浮いて見えるのは、可動天板としているためです。製品調査時点では、娘は可動天板を見て「これがほしい!」と一番のポイントでしたが、「それはお父さんには無理。その代わり鍵を2つつけてあげる」と言ってあきらめてもらいました。
が、後に、キャスターの選定のためアトムリビングテックのカタログを見ていたときに、偶然「可動天板金具」を見つけました。こなものが売っているとは! 娘には内緒で、採用することにしました。
3.調達
主な部材として、ゴム集成材を使いました。部材の選定および設計についても、
京都の海老名製材様
からアドバイスを頂きました。
費用の概算
ゴム集成材
ほとんどの箇所
約42,000円
海老名製材
シナ合板4,12mm厚
引き出し箱・背板・底板
約 5,000円
海老名製材
引き出しつまみ
約500円
D.I.Yパートナー
塗料・刷毛・など
(2台目分含む)
約13,000円
VIC's mini-shop
金物
可動天板金具、レールなど
約14,000円
アトムリビングテック
VIC's mini-shop
送料・カットなど
約7,000円
各サイトの合計
合計td>
約81,500円
費用の合計は、市販品を買うのと同等程度と思われます。ほとんど自己満足のために作っているわけです。
木材は、全て
京都の海老名製材様
から購入しました。集成材は、サイズ指定により
(オーダーメイド?)
1部材ずつの発注です。 シナ合板は、サブロクのカットサービスです。 幅、長さとも、ものすごく精度の高いカットをして頂き、とても満足しています。メール問い合わせでは、「誤差の範囲はおよそプラス1.5から2mmまで、マイナス1mmまで。」との回答でしたが、実際には、ほとんどの部材が0〜+0.5mm。ごく一部で-0.5mm,+1.0mmのものがありました。
(手元の尺が絶対的ではないので、この評価も正確ではありませんが)
製作は組立精度0.5mm以内を目指すという厳しい目標を置きましたが、この精度の高いカットサービスにより、サイズ調整を要した部材は1つだけでした。
4.制作
4.1 フェーズ1:机本体部
まずは、骨組み。接合は、直角保持ジグを使いスレンダースレッドのみで接合しています。VIC様の考え方とは違い、私は木工用ボンドはほとんど使わないようにしています。
(引き出しの箱などごく一部で使用)
理由は「やり直しの余地を残すため」です。接合してから、先に削っておくべきだったとか、先に別のものを接合しておくべきだったとか、やり直すことがたまに生じます。
(段取りが悪いといえばそれまでなのですが)
次に天板。天板を木ダボとスレンダースレッドで骨組みに固定。この時点で子供部屋のドアを通らなくなるので、子供部屋にて組み立て作業。将来、運び出すときのために、やはり木工用ボンドは使わずにスレッドを取れば天板を外せるようにしています。
そして、レールを付けた仕切り板を天板に固定。このとき、直角に接合するのに苦労しました。ジグは使えないし、仕切り板の幅方向に8mmの座繰り穴をあけ、そこにスレッドを突っ込んで長いドライバーで作業するので、なかなか直角につかず、ぐらつきます。この直角はレールの精度
(本体レールと箱レールの余裕度は0.5〜1mmぐらいが目標)
に直接影響しますので・・・結果的には、桟と仕切り板を接合する際に、調整して固定できたので、レールの精度を確保できました。
左が箱を納めたところ。レールの精度はバッチリです。 前板の取り付けは、VIC様推奨の「ボール紙スペーサー」法を用いました。
娘もお手伝い。はじめは「作るより早く買って」と言っていましたが、だんだん出来上がっていく様子を楽しめるようになりました。
本体部が、一応、完成。フェーズ1の山場、引き出しレールの精度を確保できました。 引き出しの箱は、小物が収納しやすいよう、仕切り板を自由に組み替えられるようにしました。
4.2 フェーズ2:本棚部
本棚部は、背板のアーチ加工
(ジグソー)
、可動仕切り板用のレール加工
(トリマ)
と、電動工具を初めて本格的に活用しました。練習しながらの製作でしたので、かなり時間を要しました。
(あまり写真を余裕がありませんでした)
アーチ加工は、楕円をexcelで描いて実物大に印刷し、板に紙を貼り付けたままジグソーで紙ごと切りました。
可動仕切り板で一工夫。なんとかハート型をモチーフにと思いましたが、なかなか構造的にもいける案が浮かびませんでした。仕切り板の上部をハート型に切り抜き、ハートの下部は彫刻刀で彫ることにしました。しんどい作業でした。
4.3 フェーズ3:脇机部
脇机部は、いきなり山場。天板昇降金具は、側板の内側に大きな「切り欠き」を作ってそこに収納するのですが、その「切り欠き」を作るのがたいへん。アトムリビングテックのカタログに付属している設計ガイドにしたがって、トリマで切り欠きを作ります。6mm幅のストレートビットを何度も走らせて、約70mm幅・300mm長の切り欠きを作りました。
こんな感じではめ込みます。
引き出し箱のレールについて、VIC様も触れておられなかったことを1点。レールは箱の全面ぴったりにツラ合わせして付けるのがベスト
(引っ込めたら引き出しが前に浮く、少しでも出っ張ったら前板が箱にきっちり付かない)
なのですが、16mmタッピングを打ち込む位置でかなり誤差が出ます。 思いついた方法は、写真のように3本のタッピングを途中まで締めて、ネジ位置のばらつきにより、レールの先端がきっちりツラ合わせの位置になるようなネジを選んで、一番先にきつく締め付けます。残りの2本は、レールの位置をずらさない程度に締め付けます。
脇机が出来てきました。前板は、VIC様推奨の「ボール紙スペーサー」で調整しながら取り付けます。
鍵がひっかかる部分は、のみで掘りました。この手の作業をするときの墨付けは、指定サイズの線と、その外側に+1mm
(or+2mm)
の線をもう1本描くようにしています。少し大きめに掘るときにどの程度オーバーしたか分かるようにするためです。
ネジ穴はあらかじめ6mmか8mmの座繰り穴をあけてあり、丸棒で埋めます。
ほんの少しボンドをつけて、丸棒をねじ込み、アサリのないのこぎりで切り落として、やすりで仕上げます。
これで、制作終了です。
5.塗装
塗装は、
・ポアステイン白2回塗り
(日焼け防止)
・水性ウレタンニス2回塗り
(ツヤあり+ツヤ消し)
としました。私は通常オイル仕上げを好んでいるのですが、今回は、「学習机」の性格上、天板の保護膜を重視しました。紙1枚おいて、鉛筆やボールペンで字を書いたとき、天板にペン跡がつくようでは「学習机」として失格です。水性ウレタンニスはどの程度の保護膜かわかりませんが、少なくともオイル仕上げよりはましでしょう。天板だけ水性ウレタンニスで他はオイルというのも変だと思ったので、全て水性ウレタンニスで統一しました。
仕上げは、木の自然な感じが好きなので、次回
(別の作品)
では、ポアステイン白
(日焼け防止)
+オイルというのも試してみたいと思っています。
写真左は天板の水性ウレタンニス1回目を塗ったところです。広い面積・長い距離を均一に塗るのは難しいですね。横方向1200mmは1ハケで塗りました。塗り始めと塗り終わりはかなり厚さが違っていると思います。また、ハケ幅の重なり部分は、写真左のように重なり部分だけ縞模様にツヤが出てしまっています。
写真右は2回目塗装
(ツヤ消し)
後の様子です。縞模様は消えたと言っていいでしょうか。
6.完成
完成です。娘に気に入ってもらえるよう、
・引き出しツマミをピンク色のハート型のものに
・本棚の可動仕切り板もハート型に(ちょっとわかりにくいですが)
さらに、
・鍵を2つつけるからと、諦めてもらっていた脇机の「可動天板」
も実現し、大いに喜んでもらえました。
本棚部の固定は、市販品ではコの字型の金具を本棚の両サイドにはめ込んで天板のうらからネジで締め付けるという方法をとっているようで、この金具もなんとか見つけたのですが、見栄え上、あまり気に入りませんでした。結果、側板の底面4カ所に「鬼目ナット」をはめ込んで、天板の裏からボルト留めとしました。この方が外見上も美しいですし、費用も百数十円ですみます。
こうしておけば、将来大人になったときに簡単に外せますから。
フックは、天板の「逃げ」の範囲内に納めるのが通常と思われますが、今回は少し出っ張らせました。理由は写真のようにランドセルのベルトがべちゃっと折れ曲がってしまわないようにするためです。 この木製フックを探すのも苦労しました。
可動仕切り板の構造は、こんな風になっています。 次回は、もう少し工夫の余地がありそうです。
娘は大変よろこんでくれました。
よかった、よかった。
7.反省と教訓
・ シナ合板はやわらかい。特に表面が。
引き出しの箱を作るとき、かくし釘が足りずに、一部はVIC様推奨法以外を用いました。ボンドを使わずスレンダースレッド留めです。
写真は、下穴をあけたときの様子。木口に近いところに穴をあけると、バリがそのまま木口までとどき表面のシナ材がとれてしまいました。
シナ合板は、ゴム集成材より、かなり柔らかいので、下穴はいらないですねぇ。
・ 塗料はしごきすぎない。
水性ウレタンニス
(つやありクリアー)
を塗っているときの、刷毛の様子。 VIC様推奨の和信水性ニス用刷毛を使っているのですが、VIC様記事のように、きれいな毛先になっていない。あとでいろいろ試して分かったことですが、しごきすぎて薄かったようです。これでは1200mmのヒトハケ最後まで塗料が持ちません。このように刷毛がばらけてしまわない程度に塗料をつけることがポイントのようです。
・ 広い面積の着色
ポアステインの着色は、長さ1200mm×幅700mmという広い面積では、ヒト塗りで1200mm。塗り始めと塗り終わりの濃さはかなり違ってしまっていると思われます。幸い、今回は集成材であったこと、白色であったことから、色むらとしては目立たないですが。 1200mmのはじめのほうはかなり塗料を吸い込んでしまうと思われるので、一旦、刷毛で水塗りしてから着色すると、塗り始めと塗り終わりの差は緩和されるのでは、と思っているのですが、この辺は、VIC様のコメントも賜りたいところです。
・ スライドレールは水平?
スライドレールの本体側は一番奥にくぼみがあり、引き出しが収まるときに車輪がそのくぼみにはまるようになっています。そのせいで、引き出しを奥まで納めたとき、前板は垂直ではなくほんの少し天を仰ぐ方向に傾くことになります。
前板を垂直に納めるには、本体側レールを、くぼみの分だけ最初から傾けて取り付けるべきでは、と思案しています。この辺についても、VIC様のコメントを賜りたいところです。
・ トリマビットは、奥まで挿さない。
ストレートビットでの切削が、うまく進行せず
(進めるのが重い)
、切削面が焦げることがありました。そっとトリマを手で回してみると、回転軸が揺れている。。そりゃ、刃以外の部分が木に当たり焦げるはず。
ビットがゆがんでしまったのかと思いましたが、他のビットでも同じようなことがありました。 何度か、ビットを挿し直すうちに、ビットを奥まで入れ込むと、軸とビット部分の境目あたりの不純物
(?)
がトリマ側の締め付け穴に当たって、斜めに差し込まれてしまうことがわかりました。
そこで、教訓:トリマビットは奥まで挿さずに、少し浮かせて締め付ける。
・ 可動仕切り板のレールの形状
も少しうまくできないか、来年
(もう1個、息子の机が必要なんです。)
までに、考えます。
以上、学習机のご紹介でした。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
VICの一言
鈴鹿様がコメントの中で触れられている疑問点を中心に私の考え方を付しておきます。
1.塗料はしごきすぎない
刷毛にどの程度の塗料を含ませるのがベストはなかなか難しい問題で、言葉ではうまく言い表せません。 私がかつて日曜
大工教室の講師をしていた時の経験からすると、初心者は含ませすぎの傾向があるように感じました。
これは試行錯誤というか色々試して見るしかありませんが、含ませられる塗料の量とその後の安定した塗装は刷毛の質によ
り意外なくらい差があります。
(鈴鹿様が使われている刷毛は良質ですが。)
そして無論出来栄えにも影響しますので、安
いだけの刷毛でごまかしていると、いつまでたっても塗装の出来栄えが良くならないということが起きるように思います。
2.大きな面積にステインを斑なく塗る方法
大きな面積の場合塗布されるステインの量が場所場所により変わりやすく
塗り斑 = 着色斑
を起こしやすいです。
対処法として一旦水塗りしてからとありますが、それよりもステインを水でかなり薄める方法を考えた方が良いと思います。
私の場合小・中面積でもステインを2倍に薄めていますが、大面積の場合3倍に薄めています。 当然ながら一度で出来る色
載りは僅かですが、乾いたら塗り!を繰り返せば色載りは増大しますし、色むらは先ず発生しません。
3.スライドレールが最奥で傾く件
ご指摘の通りスライドレールの奥には車輪が落としこまれるような凹みがありますので、僅かに傾きます。 この構造のため
に例えば引き出しを設置した床部分が若干手前に傾いていても引き出しは飛び出してこず収まっています。
さてこの傾きを調整すべきかどうかですが、車輪落とし込みの深さは約1.5mmあります。 最も短い300mmレールで計算した
ところ、傾く角度は0.29度、600mmレールですと0.15度と算出されました。
この微量を問題視するかどうかは個人差があろうかと思いますが、私は問題ないと思います。 と言うよりも引き出し前板の取
り付け精度の方がより問題になるだろうと思います。
4.トリマービットは奥まで挿さない
トリマービットのコレットチャックは大変デリケートな部分で僅かなごみの付着でもビットの芯ブレが発生します。 チャックの底
にごみがたまればご指摘のようなことが起きますが、だからと言って『奥まで挿さない』と言うのではなくて、『時々チャックを分
解してブラシなどで付着したごみを取り除く!』が、正解ではないかと私は思います。
いずれにせよ全ての面にわたって大変努力や工夫をされていることがありありと判ります。 さらなるご活躍を期待いたします。