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読者の作品 035
2006/10/13
前回ご紹介した神奈川県立鶴見養護学校の先生方が作られた最新作が寄
せられましたのでご紹介いたします。
製作テーマはアスレチックで大型のテーマです。 前回ご紹介した信号機の
時もそうだったのですが、実は極めて綿密な設計作業から始められています。
それを物語るのは設計図でして、私も推奨しているMicrosoft Excelで描かれ
ているのですが、何と横のセルを全てを使う
(Aから始まりIVまでの256セル)
と
いう大きな図面です。 印刷すると1セルが
5mm
四方ですので横が
1m30cm
近くにもなります。
(縦はもっと長い)
私自身ですらこんなに大きな図面は描いたことはありませんが、その大きな図
面に作業で大事な部分を全て描き上げてあり、
「まずきちんとしたした設計
作業ありき!!」
と申し上げている私ですから、是非とも皆さんに参考にして
頂きたいと思い今回は全図面を掲載しました。
(左の図をクリックするご覧いた
だけます。)
但し大変大きいので50%に縮めた画面をスクリーンキャプチュアで取り込んで
画像ファイルに変換しましたので、細部の文字は見づらいかと思います。
以下は製作にあたってリーダーシップを取られた伊藤先生の報告です。
アスレチックの製作
今、本校の中学部では
「子どもの遊び」
というテーマで研究を進めています。
その基本的な考え方は、
'遊びを指導する'
ことを前面に押し出すのではなく、
'遊びの
自然発生'
を促すような仕掛けをどのようにつくるかが大切であること、そこに多少意図
的に多様な遊びを配列し選択できる環境を整えていくこと、それはモノであったり、人で
あったり、モノと人であったり、教員の趣味や遊びであったり、学校という空間にさりげな
く置かれてあることから'遊び'は展開される…といったものです。
その環境作りの一環として敷地の一角に屋外遊具としてアスレチックを作ることにしま
した。 確実に確保できる予算は5万円。 しかし、どう見積もっても10万円近くはかかる。 県の財政難の折、不足分をいか
に捻出するか、これも素人大工の裏業で何とか見通しをつけて着工となりました。
防腐対策
しかし、屋外遊具なので防腐については、最も腐心するところです。 一番良いのは、防腐剤が注入されたアスレチック用
の丸太なのですが、コスト的にとても無理。 そこでたどるのが、日曜大工のバイブル
VIC's D.I.Y.
です。 その中の
「屋外
工作物木材」 「屋外用塗料のテスト報告」 「ミニショップの塗料欄」
を参考に次のような対策にしました。
・ 土中に柱を埋めなくて済むように、コンクリートの基礎に羽子板ボルトで固定する。
・ そのための安定性と形の面白さから、4mの丸太4本をピラミッド形に組む設計に。
・ 本体の基本部分はヒノキの丸太
(購入)
で、一部ツーバイフォー系
(学校近くの工務店の好意で頂いたもののスト
ック)
を使用。
・ 丸太は購入してすぐ、背割りを入れ
(手持ち電動丸鋸を使用)
不規則なひび割れを防止する。…
(皮を剥いたばか
りの生の丸太を購入すべき。 乾燥した丸太は、すでに不規則なひび割れが多数入っていて、始末に負えない。)
・ 丸太のひび割れ、丸太同士の設置面やボルトナットの穴にも、組立て時に防腐塗料を浸透させる。
・ 丸太の木口はよく研磨し導水面を小さくする。
・ 要所をシリコンシーラントで埋め防水対策とする。
そこで、最も悩んだのが、防腐加工としての屋外用塗料の選定でした。 いつものことながら大橋さんに次の視点で相談しま
した。
・ ホームセンターなどで、油性の防水塗料7リットル缶で5000円程度の安価なものが出ており、価格的には惹
かれるが、性能的にはどうか?
・ ミニショップで紹介されている、和信化学工業のガードラックアクア
(水性)
、
ガードラック
(油性)
、
ガードラック
ラテックスステイン
(水性)
の性能と価格。
・ その他に適当と思われる塗料がないか。
これについての大橋さんのアドバイスは実証に裏づけられた内容で、販売店はおろかメーカーに問い合わせても得られる
ものではないと感じました。
結論として、
水性ガードラックアクア
(チーク)
と
専用薄め液
(レデューサー)
を混合して使用するのが、仕上がりの色、
性能面、作業面、コスト面でベストと考えました。 業務用であり価格は多少高目に感じますが、同メーカーのガードラック
(油性)
と比較すると、同等の防腐性能ながら、一回塗りですみコストパフォーマンスはむしろ高く、乾燥の速さと刺激臭のな
さ等作業性に有利で、3年に一度のメンテナンス
(メーカー公表の標準値)
ですむことがその理由です。
防腐性能の実際については、様子を確認しながら、1年後あたりの状況を報告したいと考えています。
コンクリート基礎打ち
・ ピラミッド形に組む4mの丸太4本の底辺は3m四方とし、3mの垂木で正方形の枠を作り、その四隅を利用し
て、コンクリート基礎の位置を決めました。
・ 30p×30p×20pの仮枠4個を地面から5cm程出して埋め込み、水準器でその上面の水平を取り、杭で固
定。離形剤として内側にオイル
(エンジンオイル)
を塗りました。
・ 生コンを流す途中で、井桁に溶接した鉄筋を埋め込み、仮枠上面の擦り切りにし、羽子板ボルトを所定の位置
に埋め込みました。目測に頼ったため位置に多少のずれが生じてしまったのが反省点です。
・ 数日間水をかけて養生しました。
支柱丸太の加工
支柱となる4本の丸太先端の突合せ面の形状と根元の角度の割り出しは最も気を使った部分です。 形状は、3cm径の丸
棒で試行錯誤しました。 角度は、図面上から基本となる三角形を割り出し、6mm合板で三角形板を作り、その三角形板の
一辺を丸太に接した垂直の基準板に合わせて水平にクランプで固定し、もう一辺の切断辺をガイドにして手鋸でカットしカンナ
で修正するといった方法です。 丸太は基準面がない上、末寸と元寸が違うので、ある程度の誤差は止むを得ないと割り切っ
た作業となりました。
支柱丸太の立ち上げ
支柱となる4本の丸太は、長さ4m、末寸13cmで元寸は15〜16cmになります。 生乾きで大変重く、大人二人でも立てる
ことができません。足場が肝要と考え、作業テーブルを三台並べ、その上に大型のテーブルを一台重ね、更に長椅子を重
ね、三層の足場を組みました。 一本に教員3人ずつ担当してもらい、15人程の人海戦術で何とか立ち上げることができま
した。 根元を羽子板ボルトに固定し、先端の突合せをコーチスクリューで固定すると安定感のあるピラミッド櫓となった次第
です。 心配した誤差も許容範囲で、やれやれです。
比較にはなりませんが、動力のない昔の職人は、巨大な建造物の立ち上げにどんな技を使ったのでしょうか。 その知恵に
は関心するばかりです。
付属部分の取り付け
後は、順次丸太を取り付けていくだけで、それ程難しいことはありません。 丸太の切断には電動のチェーンソウが活躍しま
した。 丸太と丸太の接合はボルトナットを主に、場所によってコーチスクリュー
(径9mm、長さ180mm、125mm、100mm、
65mm各種)
を使用。 現物合わせで位置を確認しながら、チェーンソウの先端近くを使ってかみ合わせの窪みをアール状に
切ると安定します。 丸太と丸太は14番線の針金できつく縛って固定してから貫通穴をあけました。
子どもの参加
丸太の切断は、子どもの作業としても行ないました。 作りかけのアスレチックの傍での丸太切り作業は、この丸太がここに
取り付けられるといった理解につながり、意欲的で楽しい作業になりました。 中段棚に使用したツーバイフォーを固定する
コーススレッドのねじ込みも子どもの作業にしました。 程よい径の下穴をあけておくと、ドライバーでのねじ込みが可能になり
ます。 インパクトドライバーもうまく補助してあげると意外と使えるものです。 子どもの作業参加は必ず入れたかった工程で
す。
滑り台の取り付け
滑り台の下部のコンクリート基礎打ちの際、羽子板ボルトの位置を正確にするために、正確な穴をあけた仮枠の上蓋の板を
かぶせ、それをガイドにして埋め込みました。
滑り台の骨組みはツーバイフォーを使用し、これにツーバイテンを2枚並べて取り付けて滑り面にし、同じくツーバイテンで
手摺を取り付けました。強度は十分です。 問題は、いかに滑りをよくするかですが、滑り面は100番のサンドペーパーで十分
に研磨し、ガードラックアクアを2度重ね塗りし、1200番のペーパーで軽く磨いて仕上げをしました。 これで滑り台としては
十分な平滑性が出たようです。 ただ、最も磨耗する部分なので、定期的なメンテナンスが必要と考えています。
塗装(ガードラックアクア)
塗装は、加工の済んだ丸太に塗ってから組上げる手順をとりました。 場所によっては、裏面と接合面だけを塗っておき、組
んでから塗装する方がやりやすい場合もあります。 ガードラックアクアは一回塗りで済み、乾燥も速いので
(標準の乾燥時
間は60分ですが、夏場の屋外では15分程でべたつかなくなります)
、塗装しながら組立てが可能で、作業性が大変良く、
ガードラックアクア
の選択は正解でした。
完成して
夏休みの8月初めから取り掛かり、9月25日にとりあえず完成としました。中学部の子どもたち全員で、落成式を行い完成
を喜びました。少しずつ出来上がる様子を見たり、製作にも関わってきただけに、自分たちのアスレチックという気持ちがある
のでしょう、自然に集まる社交の場ともなり、既成の遊具とは違った味わいがあります。
今後の構想
当初の設計に加えて、ロープネットを設置できないかと考えています
(図参照)
。 業者に発注するとかなり高額になるた
め、ロープを購入し、自作できないものかと、公園のアスレチックのロープネットを観察したり、インターネットで資料検索をした
りしています。 今年の予算では無理なので、来年の取り組みにしようと思っています。
註) 写真の説明は私(Vic)によるものです。
設計図面の下のほうにあった4本の丸太の先端を削って突き合わせる検討に従い加工された丸太です。 私も似たような描画による設計はよくやります。
そして突合せの接合が終了した状態。 お見事というしかありません。
設計段階で検討したコンクリート基礎に埋め込んだ羽子板ボルトで締結した丸太下部
報告にもあるとおり4本の丸太を組み上げるのはさぞや大変だったことでしょう。 積み上げた作業補助の台の積み上げがそれを物語っています。
中間ステージの床を支える枠の製作中。
そして中間ステージの床も貼り終わりました。
綱を握ってよじ登る急斜面は丸太を半割にしたものを並べています。 半割材を所定の長さに切断する部分は生徒さんも手伝っているとか。 さぞや生徒さん自身も製作に参加して楽しかったでしょうし、完成後に嬉々とアスレチックで遊ぶことを夢見ながらの作業だっただろうと想像します。
その急斜面を真横から見たところです。
滑り台の先端を支える基礎打ちが終わった所。 ここも羽子板ボルトを埋め込んでそれにがっちりと固定されます。
そして滑り台部分の製作開始。
滑り台の枠が組みあがりました。
その先端部分です。
残るはネットの製作と取付ですが、第1期工事は完成しました。 これで楽しく遊ぶ生徒さん方の歓声が聴こえてくるようです。
Vicの一言
毎回同じ事を言って何かの一つ覚えですが、ただただ先生方の注ぎ込まれる情熱に頭が下がる想いです。 時間があれば私自身も製作に是非とも参加したかったところで、そういった直接参加は別としても皆さんを応援して行きたいと思います。
尚ガードラックアクアについては最少販売単位が4リットルと大きいため、大きな屋外テーマ向けの塗料になりますが、すこぶるつきの優良塗料です。
mini-Shop
でお求めの場合には詳しい裏技を含めた使い方などのアドバイスを致しますので、メールにてお問い合わせください。