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読者の作品 034
 
2006/09/22

今回ご紹介する作品は神奈川県鶴見養護学校の先生方が作られた教育用交通信号機です。 実は私も一部お手伝いをさせていただきましたが、最終組み立て、点灯テストに立ち会うために訪問した時に吃驚仰天! 日曜大工を超えてしまった!と言っても過言でない金工、溶接作業も含む大変な力作であり労作でした。 生徒さん達を深く思う情熱がなければ絶対に製作不可能と思われ言葉もなく脱帽しました。  完成したのは昨年の12月ですが、私が担当した電気回路部分の信頼性に欠ける動作があってはと思い、約9ヶ月の実働にて一応問題なさそうなのでご紹介することにしました。 以下は製作のまとめ役をされた伊藤先生のコメントと写真です。


信号機の製作

大橋さんとの出会い
 昨年4月、たまたま出会った大橋さんのVIC's D.I.Y.に瞠目し
 てしまいました。 そこに展開されている検証に基づいた技法の
 詳細と販売商品の丁寧な説明は、多少なりともモノづくりに意
 義を感じている私にとってはまさにバイブルです。

 教具としても使えるVIC's D.I.Y.に紹介されていた「ドリルア
 タッチメント」
の製作を通じてお世話になって以来、養護学校の
 教材・教具作製に際して様々なアドバイスを頂いています。

信号機製作のきっかけ
 知的障害の養護学校で学ぶ子ども達にとって、交通ルールの
 理解は一人で外出するための大きなネックになっています。

 信号機の理解はその代表的なものです。 街に出て、本物の
 信号機で学習するのが実際的なのですが、そう度々可能な方
 法ではありません。 学校の活動として外にでる回数に制約が
 あること、交通量の問題、本物の信号機の位置が高すぎて、
 子どもの目線がそこに向きにくい等の課題があります。

 そこで、昨年6月、校内に常設できる信号機がつくれないもの
 か?と、次のようなおおよその構想でスタートしました。

  ・歩行者用と車用の信号機をセットにして、自立させる。
  ・高さは、2m程度で、実物をイメージできる程度のミニチュアとする。       (図をクリックで拡大してご覧いただけます。)
  ・実際に即した点滅・点灯のパターン繰り返しができる。


 本体は、木工ベースで形を作り電球、配線の組み込みとスイッチ盤はできるにしても、点滅・点灯の連動したパターン繰り返
 しの装置が果たして可能か…というところで足踏みしました。 歩行者用と車両用の電球併せて5つのスイッチを手動で操作
 するのが最も簡単と考えましたが、それでは常設点滅の用途には耐えないので自動化の可否について大橋さんに相談しま
 した。 間もなく大橋さんより業務用タイマーリレーの組合せによる電気回路で可能であるとの回答を、回路図と併せて頂きま
 した。 ただ、一般的な電気知識しかない私にとってはチンプンカンプンで、太刀打ちできるものではありません。 そこで、自
 動切換え制御回路部分の製作は大橋さんにお願いし、本体はこちらで作り合体させることにしました。

本体の材料選定や製作ポイント
  ・ミニチュアながら、本物に近い形状とする。
  ・高さは、校内移動を考慮して、廊下の天井にぎりぎりぶつからない2348mmにする。
  ・支柱は足場用の鉄パイプが安価で強度も十分で、その鉄パイプ用のアングルが電球ボックスを取り付けるのに丁度よい。
  ・鉄Lアングル25×25×910を加工して支柱の支えにする。
  ・電球ボックスは、軽量化を図るため9mmラワン合板を使用する。
  ・車両用電球は松下電工カラービーム電球BF110V80W-R 121×132赤・青・黄を使用。信号ランプにそっくりで最適。
  ・歩行者用電球はレフ電球60W 80×125 E26を使用。
  ・車両用フードは直径150mmボイド管をジグソーで切断。
  ・歩行者用フードは、不用になったスチール製ロッカーの棚板を使用。


大橋さんの自動切換え制御回路ボックス
 大橋さんは、回路部品は信頼性の高い業務用のものが必要と考えられ、その選定と仕入れから始められ、大変なご足労を
 おかけしました。 松下電工製業務用タイマーリレーを6個組み合わせ各電球の点灯・点滅の時間が独立して調整できるよう
 になっています。 これは、授業で使用する際に大変重宝するものです。

本体と自動切換え制御回路ボックスの合体
 昨年11月大橋さんから制御回路ボックスが完成したとの連絡が入り、取り付けのためにわざわざ来校して下さいました。
 配線の接続や本体の取り付け部分は図入りのメールで確認していたこともあり、作業は何の問題もなくスムーズでした。
 電源を入れると点灯・点滅の動作は、

  ・車両用信号機は、青→黄→赤への切り替えの間に直角方向の信号機が赤→青に切り替わり連動する。
  ・歩行者用信号機は、青→青点滅→赤と切り替わる間に直角方向の信号機は赤→青に切り替わり連動する。


 といった具合に、本物と違わぬ完璧なものでした。

完成して
 ヨットの広場(フリースペース)に設置してみたところ、興味深々の子どもたちが信号機の前で立ち止まったり、ランプが切り替
 わったり点滅する様子に小躍りして喜んだり、律儀にも赤で立ち止まって青になるのを待ったり、なかなかの人気です。
 2,348mmの高さは子どもの目線にとっては丁度よいサイズだったようです。信号機本体そのものではただの物でしかなく、
 ランプが本物と同じように点灯、点滅する様に自然に惹きつけられるといった様子がみられます。  特設授業の中でも勿論
 活用できますが、常時そこにあって点灯・点滅を繰り返すことの方が学習効果が期待できるようです。

 朝から児童・生徒下校時まで、毎日点灯させていますが、9ヵ月余り経過しても作動に全く問題なく、その堅牢性と信頼性を
 実感しています。  これもひとえに、大橋さんのアドバイスと援助の賜物です。  ちなみに、材料費用は、信号機本体が約
 3万円、制御回路ボックスが約3万円強、合計6万円強です。


完成した交通信号機の全景。 かなりの部分が金工で作られています。 キャスター付きで移動も楽に出来ます。

製作にあたられた先生方と2005年12月に完成時の記念写真。 右手前がまとめ役の伊藤先生です。


 信号機の実際の作動の様子は左の写真をクリックすると
 動画でご覧いただけます。 (46秒 320 x 240 pixels)

 動画ファイルはWindows Media Playerのフォーマットです。
 ファイルサイズが15Mbt以上と大変大きいので読み込み
 にかなりの時間が掛かることをご承知おきください。


 それぞれのランプの点灯時間は極力短時間でご覧頂く
 ために短めにセットされていますが、本物の信号機の切
 換間隔と同じにすることは無論可能です。

 歩行者用信号機が赤になってから自動車用信号機が青
 に替わるときにタイムラグがあることを確認できると思い
 ますが、このタイムラグも調整出来ます。


歩行者用のクローズアップ。 細部まで本物の信号機を良く再現しています。 全てのランプからの配線は鉄パイプの柱を通しますので、配線をいたずらされにくくしかもすっきりとまとまっています。


自動車側の信号機は表裏にランプを配して両方向から見えるようにしてあり、それと直角方向に歩行者用が取り付けられている構造です。

本体は鉄パイプの組合せですから大変強固になっています。 裏側もきちんと仕上げられ完成度は極めて高いです。

本体下部。 鉄パイプの柱は鉄製チャンネル材で作られたステーでがっちりと台座に固定され頑丈そのものです。 上に見える箱がコントロールボックスです。

コントロ−ルボックスの蓋は鍵をかけて不要にいじられないようにしてあります。

私が製作したコントロールボックスの蓋を開いた所。 6個のツマミが見えますが、そのうち5個はランプの点灯時間の調整用、1個は歩行者用青ランプの点滅間隔調整用です。

コントロールボックスの心臓部。 FA用のタイマーリレーを6個使っていますが、万が一故障してもプラグイン式ですので簡単に交換が可能です。


Vicの一言
コントロールボックス部分の製作依頼を受けたとき先ず頭に浮かんだのは、長期間使用の耐久性とメインテナンスのしやすさでした。 暫しあれこれと調べる中でコスト的には若干不利なもののFA用(ファクトリーオートメーション)プラグイン式タイマーリレー(1個\4,000-\5,000)を採用するのが、最も信頼性とメインテナンスの容易さで有利だろうと結論付けています。 従って故障した場合には不具合を起こしたタイマーリレーのみを交換すればよく、交換作業は簡単で誰でも可能です。

設計に当っては実物の信号機の近くに座り込みストップウオッチで点灯間隔を調べると共に歩行者用赤ランプが点灯してから自動車用青ランプが点灯するまでに若干のタイムラグがあることを発見しその部分も再現すると共に全ての点灯時間を独立して可変できるようにしています。