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木工作業での穴あけ
2004/12/24

先週のメルマガで木工ドリルと金工ドリルの違いについて触れ、木工にはやはり木工ドリルを使用したほうが良い!と述べたところ、そんなに違いが出るものですか? とのお便りがあった。  私は根拠なくあおっているつもりはないので、実際にどのくらい違いがあるものなのかについて写真でお見せするのと同時に木工に於ける穴あけについて触れることにした。

まず木工用ドリルの種類だが、私の使っている物でお見せするとこのようなものだ。 比較上左端に金工ドリルを入れた。

太さはバラバラだが左から金工ドリル、先端ネジあり、ネジを削った物、先端ネジなし、対称的に刃のついた物、自在ビット、フォスナービット。

左から2番目と4番目はは外周を切り込む刃が1枚と底を削る刃が1枚付いたタイプで、木工用ドリルとして最も多くの種類が出回っている。 しかし先端にネジが切られたタイプと切られていないタイプがあり、前者は作業効率は良いがほる深さのコントロールが難しく、深い貫通穴用と考えた方が良い。 後者は穴あけを途中で止める座繰り穴に向いている。

左が先端ネジあり、右が先端ネジなしタイプ。 中央はネジをヤスリで削って右の物と同等に改造した物だ。

左は外周切り込みと底面切削用の刃が1枚ずつ付いた物。 右はそれぞれ2枚ずつ付いた対称刃タイプだ。

最近太さの種類が充実してきたのが、対称刃とした物(右上の写真参照)で、よく出来た物は穴あけ時のブレが少なく横方向へのすべりも少ないので、精密加工に向いている。(穴がひりがりにくく木ダボ用穴あけに最適である。)

より大きな穴をあけたいというときに便利なのが自在ビット(可変ビット)と呼ばれる物だが、かなり粗っぽいあけ方になるのと危険を伴うこともある。 穴の直径は固定となり切削速度が遅いもののフォスナービットは優れた仕上がりで群を抜いている。

自在ビット(左)とフォスナービット。 自在ビットは先端ネジタイプで良く切れない刃である事が多く、危険も伴う粗っぽい穴あけになるが、直径が可変である事が唯一の利点。

私が最もよく使うサイズのフォスナービット。 左から10φ、16φ、19φ、22φ、35φ

22φのフォスナービットの刃のクローズアップ。 外周切り込みは連続した刃になっており、穴の断面は大変綺麗に仕上がる。 底面は対称刃で削るのだが完全にフラットになるのはフォスナービットの特徴。

こちらは35φのフォスナービット。 スライド蝶番取り付け穴に最も頻繁に使用している。 直径が大きくなると外周を切り込む刃はノコギリ状になる。

数種類のドリルで穴をあけたときの違いを写真でお見せしよう。 残念ながら手持ちのドリルの関係で、太さが一定していないのだけはご容赦願いたい。 勿論以下の結果は一切の手心を加えたものではなく皆さんがやっても同じ結果が出る。

太さは一定していないがそれぞれのドリルで穴をあけた結果。 左から10φフォスナービット、8φ対称刃付きドリル、先端ネジあり片刃ドリル、金工ドリルである。  この写真だけでも金工ドリル以外は穴周辺のバリが少ないことが判る。

フォスナービットであけた穴のクローズアップ。 バリが最も少なく穴の切断面(壁面)も一番綺麗だ!

対称刃付きドリルであけた穴のクローズアップ。 フォスナービットには及ばないが、これもバリが少なく壁面も綺麗。

先端ネジ付きドリルであけた穴のクローズアップ。 対称刃よりもバリがやや多く、壁面も若干荒れているのが判る。

最後が金工ドリルであけた穴のクローズアップ。 何も説明は要らないだろう! 他との差は余りにも大きい。

ドリルのタイプ以外に切れ味そのものも当然上記の結果に影響するが、上で使ったドリルは対称刃付きを除き全て国産では最高の性能と信頼性で知られている物で見掛けだけの安物ではない。  そして対称刃付きのものだけはオーストリア製のクロームバナジューム鋼を使用した硬いFRPの穴あけにも使える優秀品である。  このタイプはメーカー間の優劣の差が大きく色々使って探し当てたもので、自信を持ってmini-Shopで販売している。  従って単純に形が同じだから結果(性能)も同じとはならないが、整理して一覧にすると次のようになる。

ドリルの種類 作業性(切削能力) 直進性 バリの出具合 壁面の綺麗さ 貫通穴 座繰り穴 サイズの豊富さ
金工ドリル X X (サイズの種類が多い)
先端ネジあり片刃 X (5-30mm 0.5mm刻み)
先端ネジなし片刃 (5-30mm 0.5mm刻み)
対称刃付き + + (3-20mm 1mm刻み)
フォスナービット X (10-65φ 間隔が粗い)
自在ビット(可変ビット) X (12-65φ位 連続可変可能)


金工ドリルが木工用には余り旨くないことがご理解願えたと思う。 これから木工ドリルを買われるのであれば、上記の表でピンクで示した対称刃のドリル(3mm-10mm)、それ以上はフォスナービットをお奨めする。 自在ビットも持っていて便利だが、粗っぽいあけ方になることと危険を伴うので注意されたい。


最後にセンターポンチについて一言

木工作業では穴あけ位置にセンターポンチでマーキングする方が少ないが、金工の場合と同様センターポンチの使用をお奨めする。 その一番の理由は穴あけ初期に起き易い横滑り防止だ。 キリで穴をあけても良いが、センターポンチで正しい円錐状のマークを付けたい為だ。 そうするにはセンターポンチの先端が重要であり、シャープに尖った鋭角状のものよりも先端が見える範囲で鈍角になった物の方がドリルの刃先が正しく嵌まり込むからだ。 これは木工のみならず金工の場合でも同様でセンターポンチも良く選びたい。

私の持っている2種類のセンターポンチ。 下は20年来使った良く見掛ける物、上は現在お気に入りのものでクロームバナジューム鋼製。 使い始めてから1年経った。

どちらも大変硬く頻繁に頭を玄翁で叩いているのだが、ご覧のようにつぶれることは全くない。

違いはここにある。 長年使った物は先が尖りすぎてドリルの先端が底に当らないため穴あけ開始時に横滑りする可能性がある。 右は鈍角になっており正しく中心にドリルが当りやすい。

左が木工ドリル、右が金工ドリルだが何れの先端も従来のポンチの先よりも鈍角になっている。 従って鈍角の先端のポンチの方が横滑りしにくい。

以上ご紹介した様々なドリルの中で、フォスナービット(10φ-55φ)クロームバナジューム鋼製対称刃付きドリル3φ-10φセンターポンチmini-Shopで販売していますのでお試しください。 尚ニッケルダボ用のドリル8.5φのみは先端ネジなし片刃となります。


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