2004/01/30
設計をする! という言い方をすると「それは出来ない!」、「難しくて駄目!」とはなから毛嫌いと言うか全く手のつけられない領域!と受け止められる方が大変多い。 しかし私がここでお話しようとしている設計作業とは、頭に浮かんだ構想をまとめ上げた覚書みたいな物であって決して大上段に構えるような本格的なもの(プロの世界での約束事に準じた描き方)ではないのだ。 覚書と書いたがメモ帳と言っても良いような物で、無駄の起きないように総て思いついた事柄も一緒に備忘録としてその中に書いてあるケースもある。
料理の世界ではその料理に使用する材料の一覧と材料それぞれの処理、調理の過程を記したものをレシピとして記録しておくがここでいう設計図は全く同じ目的のもである。 但し文章だけだと表現しきれないので図面が必要になってくる違いがあるだけだ。
レシピなしで料理を作るのは非常に難しいことはお判りいただけると思うのでこれをイメージして欲しい。
何で私が日曜大工においてのレシピ(設計図)を描くことにこだわるのかと言うと、
1.失敗作を作りたくないから。
2.出来るだけ安く作りたいから。
3.構造検討に必要だから。
4.後々に記録を残したいから。
5.プレカットの必要性から。
と言った理由による。
私は私自身が臆病だと思っている。 また用心深い方で石橋を叩いて渡るタイプでもある。
従って設計の重要性を必要以上に感じているのかもしれないが、一つの作品が完成した時の充実感は、いきなり頭の中で考えただけで作り出すやり方に較べて遥かに高いと思う。 と偉そうなことをのたまわっているが、かく言う私も実は本格的に設計図を描き始めたのは15年前のことである。 それまでは紙に手書きで描いた絵程度で作業をしていた。 それがあるきっかけでよりまともな設計図を描くようになったのだがそのきっかけについては後述するとして、上記の理由についてちょっと説明を加えたい。
1.失敗作を作りたくないから。
随分前の話だが作り始めたものの途中でこりゃ駄目だ!!と投げ出してしまった作品が恥ずかしながら10点近くある。
その一
番の原因は検討不十分なまま作業を開始したことにある。
後述する設計の手順を踏んで行けば、うまく作れそうなのかどうか? 実用品として使い物になるかどうか? がかなり
判ってしまう。 従って失敗作を作ってしまったり、途中で投げ出すようなケースは激減する!というか設計の段階で、あっ!こ
れは検討不十分だから作らない方が良い。と判断でき出費上の実害が発生しないのだ。
昨年、製作テーマとして掲げた構想の中には結局作らずじまいで終わったものが何点かあるが、それらは何れも構想・設計段
階で棚上げとした物ばかりである。 余りにも敷居が高いテーマであると設計段階で総てを見切ることは至難の技となるが、
複雑な電子工作が絡んでこない限り家具の範疇であれば設計段階で問題点を抽出し、失敗が少ない作品をものに出来ると
断言できる。
2.出来るだけ安く作りたいから。
これは大変切実な理由だ。 日曜大工で材料費に占める木材の割合は大変高く、私の実例では平均して70%強である。
その木材を、「必要量だけ下さい?」 というわけには行かず、端材と称する使い残しが必ず出るのだがこれが少ないほど安く
上がるのは言うまでもない。 この余り(端材)を少なくするにはきちんとした設計が不可欠なのだ。
実際にどのように端材を少なくするかというと、設計の1過程で出て来る「板取り」と呼ぶ検討で効率の良い木材の使い方を
工夫できる。 場合によっては設計の前の段階に戻り寸法をちょっと微調整したり、別な材料に変更するだけで大幅に板取り
が良くなることもしばしばある。
購入した材料のうち端材の発生が20%以下であればかなり利用効率がよいと言えるが、そうするためには設計作業を無視し
ては実現しない。
実際に私が作った大型家具では総材料費が10-15万円掛かったものが殆どだが、板取りを検討することにより少なくても
1万円、多い時では3万円程度材料が節減できている。(材料の質を落としたのではない。)
3.構造検討に必要だから。
縦、横、高さが決まっており板厚も決定している箱を作ろうとしたら設計図なしでいきなり作っても問題は起きないが、そのよう
な単純なものよりも十分な構造検討を要するケースの方が多く、その構造が適切でなければ失敗作に繋がってしまうのだ。
特に金具などを正しく使うためには取り付け上の指定条件を満たさないとならないが、これが適当に進めてしまうと取り付け段
階になって矛盾に気がつき、大幅修正を加えねばならないことが発生する。 (扉の製作、引出しの製作などでは特に重要)
またどんな作品でも設定された外寸の中を如何に有効利用するかが大事であり、仕切り方、取付け方の変更、強度不十分に
対する対策等々最終的にこれで良しとなるまでには様々な紆余曲折があるはずである。 このような経過を辿るには設計作
業が不可欠なのだ。
4.後々に記録を残したいから。
作ったものを何年か後に修繕、変更の目的で手を加える事が起きる可能性があるが、その際使っている材料の詳細、表面か
らは見えない構造が判っていないと作業が結構難しくなる。
こんな時に設計図が残っていれば大変助かるし、私が言う所の設計図には本人だけが判るようなメモも入っているから、そう
いった作業をやりやすい。(例えば使った材料、金物、塗料の名称とかペイントの混合比がどうだったかとかのメモ)
ある種の日記帳みたいな側面もあるから、後の日に見るとその当時の作業風景や苦労したことを思い出したりしこれだけでも
結構楽しいのだ。
5.プレカットの必要性から。
設計図を何故描くのか?と言う理由の中でこの理由の重要度は極めて高い。
Vic Ohashiの一歩進んだ日曜大工の根幹をなす部分である!!といっても差し支えないのである。
前回お話したように私が作業する場所として推奨しているのは室内でありこれによってマンション住まいでも実現できる。
その場合の大きな問題は、大きな材料を保管する場所が限られている! ということと、長い材料を手引きノコで切断す
るのはせつない!の2点でありこれらへの対策が是非とも必要なのだ。
そのベストの解決策は、縦方向(木目方向)の切断は木材を購入した所でやってもらう。 である。
設計をする時に材料を無駄なく使いたいから!という観点から、より大きな材料を採用することはかなりある。
例えば高さが天井高となる家具を作ろうと思ったらシハチの合板(2420 x 1210mm)を採用する可能性がかなり高いが、これ
の18mm厚となったら大き過ぎるだけでなく重くて取り回すだけでもやっとだ。 サブロク(1820 x 910mm)でも24mm厚になる
と運ぶだけでも辛い。 角材で取りを良くしようと考えたら12尺(3.6m以上)となり、家の中に運ぶことすら難しくなってしまう。
よってこれらの材料を購入時に縦方向を切断したり、必要な長さに短くしてもらうのだ。 材木店で購入する場合にはテーブル
ソーなど電動ノコを備えているから問題ないし、ホームセンターで購入した場合もパネルソーなどでの切断サービスを受けられ
る所が殆どであるので、この実現は決して難しくはない。
但し注意して欲しいのは適当な大きさに切ってもらうのではなくて、ドンピシャサイズ゙に切ってもらうことにある。 少し大きめに
切ってもらい後で最終寸法に自分で切断するのではちっとも省力化に繋がらないし、無駄(端材)が生じてしまう。
そうではなくて設計段階でこの部分は購入時に切断してもらうことを予め決めてしまうのだ。 そして指定して切ってもらった部
分は2度と切らないで済むようにしておく。 こうすることにより手引きノコで切ない思いをしながら延々と切断に時間を割かな
いで済むようになる。
もうお判りかと思うが一歩進んだ日曜大工の実現には、設計図(レシピ)を描くことが不可欠なのである。
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