HOME
サイトマップ
アマ的手法
材料
工具
作品一覧
リンク
mini-Shop

 
ミリ単位の扱いに慣れよう
2006/07/21  以前日曜大工入門に掲載されていたものを再編集。

以前ホームセンターで働いていたときに、あるお客様が「棚を作りたいのだが切断をしてもらえますか?」と相談を受けた。
その方の説明によれば内寸幅77cmの壁と壁にはさまれた奥行き45cmの窪みがあるので、そこに棚を作りたいとのことだった。

幸い壁の下地は合板なので、棚を受ける或いは棚を固定する桟などの位置は自由度が高くぴったりとはめ込みたいということであtったので、「それでは内寸幅と奥行きの正確な寸法を最上部、中間部、最下部の3箇所でミリ単位で計ってください?」と尋ねた所再び77cm45cmです。」との返事が返ってきた。

「それではきつからず緩からず丁度ぴったりと嵌め込むのは難しいですから、もう一度調べてもらえませんか?」と再度尋ねた所、家人の方に電話して調べてもらったらしいのだが、答えはやはり77cm45cmだった。 

仕方なくメジャーを伸ばして見せ、「私の想像では77cmと言っても実際には772mmかも知れませんし768mmかもしれないのでは?と考えています。 はしょってしまえばどちらも77cmですが、後者であったとしたら77cmぴったりに加工したらきつくて入らなくなるでしょう。 前者であれば問題は殆どなくぴったりとはまり込む格好になると思います。 従ってmm単位まで寸法を知りたいのです。」と説明した。

その方はどうにも承服しかねるような様子で、私がかなり無理難題を言っているようにどうやら受け止めているようだった。 そしてついに「私が77cmと言っているのだからそれでいいじゃないか!切ってくれるのかどうなのか?」とおっしゃるので、「不具合が発生しても責任は負えない。」という条件のもとで棚板を切断して差し上げた。

後日連絡があり、実際には内寸幅は77cmより大きく5mm近くの隙間が出たようだが、薄板を挟むことで解決したようだった。 もしも775mmとミリ単位で測ってもらえていれば、私は安全を見て773mmで切断し隙間を埋めるような必要は殆どなかったろうと思う。

似たような話は日曜大工教室でも起きており、ミリ単位で表現したり寸法指定をすると不思議そうになったり、何でそんなに細かい指定をするのか?と質問する方が時々る。 どうやらミリ単位の扱いになれていない方が結構多いようなのだ。 

そんな時に私は次のような話をすることにしてる。

地球の全周は約40,000kmありますが、ここに長さが地球の全周より10mm長い紐がありこれで地球の周りを包むようにしたら一体どのくらいの隙間が地球との間に出来るでしょう? というものだ。

殆どの人はたった10mm長くなったのであれば地球の大きさに比べればたいしたことないから隙間など殆ど出来ない。 と直感的に思うようだが、円周=直径 x 円周率(3.14159)から導きだされる、1.59mmが答えであり、予想外に大きな隙間に吃驚するようだし、mm単位の長さにも関心を持ってくれるようになる。


こんな例から条件によってはミリメートル単位で考えないと誤差が多くてまともな工作物にならないことがあることを説明し、ミリ単位に慣れてもらいようお願いしてどうやら納得してもらっている。

全ての長さをミリメートルで考えるのは最初は面倒かもしれないが10進法であるメートル法ではどちらかと言うと簡単な慣れの問題だと考える。 ヤードポンド法における長さの表示を細かくしたときのややこしさに比べれば遥かに楽だと思うからだ。

インチで長さを言うときは、1インチ(25.4mm)以下の長さは1/2インチ、1/4インチ、1/8インチ、1/16インチ、1/32インチ、1/64インチのように分数で表現し、言うまでもなくこのルールで表示された目盛りの幅は1/2のステップで狭くなって行く。 1/64インチは約0.4mmの微量で、普通の物差しには1/32インチの目盛り(約0.8mm)迄しか刻まれていないことが多い。

考えてみて欲しい。 例えば11-29/32インチとの長さがある。 これをメートル法で表現すると302.4mmになるのだが、ミリメートル単位に丸めるなら四捨五入して302mm、センチメートル単位なら30cmと簡単に算出可能だ。 一方11-29/32インチをその上の粗い1/16単位で言うときに11-15/16インチ、細かい方へは11-57/64インチ〜11-59/64インチになるのだがこの変換は咄嗟にはしにくい。 メートル法を使えるメリットはこの簡単な変換にあるので、日曜大工における全ての長さをミリメートルで測りミリメートルで計算するようにしたい。 センチメートルよりもたった一桁大きな数字を扱うだけなのだ。



Copyright (C) 2001-2019, Vic Ohashi All rights reserved.