2006/07/14 以前D.I.Y.雑談に含まれていたものを再編集しました。
読者の方から塗装してから組み立てたほうが良いのか?それとも組み立ててから塗装したほうが良いのか?というご質問を頂いた。
正直言って私はこの件についてそれ程深く意識しないままこれまで製作を続けてきたが、とても良い所に気が付かれたと考えている。
先ず疑問に対する答えを先に言ってしまうと、「塗装してから組み立てる方が塗装のやりやすさ、質の向上が期待できるので理想であるが、現実にはそれが不可能な場合が多くケースバイケースで判断せざるを得ない。」 ということになる。
塗装を先に済ませた場合のメリットは、
塗装部分を水平面にして作業しやすいので塗りやすく塗装の質を高めやすいし、塗装具合の確認が容易。
と言う点にある。 組み立ててから塗装すると、垂直面の塗装、逆水平面の塗装、入り隅(引っ込んだ角)の塗装、高い所の
塗装など塗装の質を保つのが困難な場合が多くなる。 水平面の塗装で済むのであれば誰がやっても楽であり良好な結果を
生む理想方法だ。
しかし組立前に塗装したとすると次のような問題点が生じる。
1.塗装の場所の確保が難しい。
例えば個室1の例で説明すると主要な部材だけでもシハチ合板(2400 x 1200mm)が6枚使われている。
面積的にシハチ合板はサブロク合板の1.8倍近くある。 従ってサブロク合板換算では11枚近くのものを置くスペースと部材
間隔や歩き回れるスペースが必要になるので恐らくその2倍位のスペースが必要になるだろう。
となると22畳の部屋が必要でありしかも塗料が乾燥するまで動かせないから専用の工作室でもない
限り実現不能だ。
実際には蝶番を外して塗装する扉部分と可変棚だけは外して塗装するのだが、大型家具の場合には
これだけでもとんでもないスペースを食う。 (右は個室1の製作での塗装風景)
2.接合部分に対する事前の配慮・手間が出てくる。
木材接合の強力な助っ人である木工ボンドも塗装面に対しては無力で接合力は失われてしまう。
従って木工ボンドを使う接合面は塗装する前にマスキングテープで覆ってやるとかして塗料が乗らないようにしなければなら
ずこの手間は決して馬鹿に出来ないのだ。 ネジと木ダボだけで組み立てられるのであれば問題ないが、接合強度を考える
となかなかそうも行かないし、板厚が薄い場合には木工ボンドだけにたよざらるを得ないので、+αの作業となってしまう。
3.設計変更が出てきたときの対応の困難さ
塗装を済ませてから組み立て中に接合位置が変わったとか一部の部材のサイズ変更が生じるとややこしいことになる。
特に考えねばならないのはサイズ調整の為にカンナを使う場合、塗装面を削るのはカンナの刃にとって極めてよくないことだ。
また新たな接合面が塗装されていて木工ボンドを使わねばならないとすると、その部分の塗装を剥がさねばならなくなりこれ
が大仕事になってしまう。 従って現実的には組み立て中に設計変更の発生しない場合にのみ事前に塗装するほうが余計な
作業をしないで済む。
ということは1テーマ1作品の日曜大工ではいつ設計変更が出るかもしれないし、現物合わせの場合には尚更そのようなこと
が多発するだろうから組立て前に塗装するのは宿命的に困難である。
4.両面塗装の所要時間が倍掛かる。
塗装の一般的な作業時間の大半は塗料の乾燥時間で決まってしまうと言ってよい。 油性ニスの場合2回塗りで済ませると
するとそれぞれの乾燥時間は最低でも6時間は掛かる。 これに作業時間そのものや準備後片付けの時間を考えると1日で
済ませるのはほぼ不可能であり、実際の所私は初日の午後1回目の塗装後1晩放置して翌朝2回目の塗装、そして夕方完成
というやりかたをする。(2日掛かる。) 但し両面塗装がある場合には最低でも3日(ちょっと非効率なことをすると4日)掛かっ
てしまうしウィークエンドの土・日2日を使って済まそうなんてことは負荷のうだ! またそんなに長時間塗装した材料を乾燥
させるのに部屋を占領するような状態は家族にとっては耐えがたいことだろう。
註) 現在では物理性能が優秀な水性ウレタンニスがあり水性塗料の乾燥速度は大変速いから、手順を上手くやれば両面2
回塗りを1日で完了することが可能だ。 部屋のスペースを食うことには変わりはないが1日で終わりしかも臭いの問題も
ないから家族が眉をひそめることも殆ど起きないであろう。
以上を整理すると組み立てる前に塗装するのは塗装の質にこだわるのであれば理想だが、現実は特に大型の作品の場合殆ど無理であり組み立ててから塗装するしかない。 その際の塗装の質の低下は根気と場数を踏んだ上で腕を上げることにより防止するしかない。
無論それらの為にスプレー塗装を考えるのは養生の困難さと費用からして、日曜大工的にはもっと現実的ではない。
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