板の反りとそれらへの対処法・補足
読者の方からお便りを頂き、合板で家具を作るのは無理なのでは?とのコメントを寄せられた。 また余りにはしょり過ぎた面もあるので、誤解を招かない為に補足説明をしておきたい。
1.私の言う反りの程度
前回の説明では反りの程度について全く触れていなかったが、私が問題としている反りはそれほど大きいものではない。 実例で言うと寝室の収納家具(クローゼット)の扉がそれで、高さが1945mm、1494mm、1196mmの3種類あるが(幅は全て382mm)、観音開きの夫々左右の扉の段差が最大で1.8mm、3.3mm、3.0mmある。 扉の長さに対して0.09%、0.22%、0.25%の段差だ。 ここで段差としたのは左右の扉の反りが同じ量であれば段差は無くなり、反っている事には気づかないだろうということだ。 正直言うと材木屋さんから納入された時には見逃していたのだが、最終切断する時になって気がつきより長い扉を優先して反りの量が近しい物を組合わせたため、率的には短い扉の方が反りによる段差が大きくなっている。 それらの段差は面白くないには違いないが季節の変化(湿度の変化と考えてよい。)で変わってくることもあって矯正しないままにしている。
2.反りを目立たせない加工組立
側板など構造的な部分では大きな板がその中間で何にも支えが無いということは大変少なく、反りがあっても矯正するのは簡単であるし、事実上気にする必要はない。(個室1の収納家具の右から3番目の側板がそうだったが、簡単に矯正できた。) しかし前述でも触れたように観音扉などを作る場合で幅が狭く高さの高い場合は反りによる影響が出易いので、反りの絶対値よりもそりの傾向の同じものを左右に配置する配慮が必要だ。 そして扉の両面の仕上げを同一にすべきである。 塗装仕上げでも表と裏の材料を替える事は湿度の変化による収縮率の違いから反り具合が大幅に変化する。 無論片方だけの塗装は更に良くない。 桟や添え木を当てて反りを強制的に修正する方法も考えられるが、細い材料であると効果は殆ど無い。 その様な事をするくらいなら加工の手間がかかるが、フラッシュ構造としてしまったほうが良い。 但しこの場合の扉の厚みは最低でも2.7mm+20mm+2.7mmの合計25mm強位の厚手の物としないとやはり反りが発生する危険があるし、捻じれ、撓みの問題もあるので全ての面で有利とは言いがたい部分もある。
3.合板の反りについて
上記でも述べたようにたまに発見する反りと言ってもその絶対量はかなり小さい。 1%もあれば大変な量だ。(シハチ合板の長手方向で24mmという事になる。) 実際には0.2-0.3%辺りの反りで気がつきだす。 但し合板の中でも安いコンパネとなると話はかなり違ってくる。 反りの絶対量が多いだけでなく、波打ったように複雑怪奇な物を多々発見する。 これらは反りという問題点を最初から無視している作り方が原因であり、良し悪しを論ずる事自体全く意味をなさない。 かく言う私も20数年前に始めてコンパネで作った大きな収納ボックスが結局物にならなかった苦い経験をしている。
このコンパネで家具を作ろうという発想は、いくら材料が安くても副次的に出てくる問題の対処の為に大幅な手間がかかりその割には外観はみっともないままという銭の無駄遣いにしかならないので採用しない方が賢明である。
私にメールを寄せられた方は、ホームセンターで売られている合板は家具には向かないのでは? と言われていたが、これはどちらかというと誤解であると思う。 むしろ購入先がホームセンターであろうとなかろうと、長い間在庫しているような物は反りがひどくなっている可能性が高いということと、客が選別してしまうため反りの多いものが残っていることが多い! と考えた方が良い。 余談ながら私の知人の特注家具を請け負っている方によれば、彼らプロの世界では、材木問屋から入った材料を選別して反りの大きい物と少ない物を分けて、反りの大きい物は影響度の少ない部材に使用する。とのことであった。 という事であれば、我々が経験する反りの問題も充分うなずけるが、さりとて我々アマチュアには余りにも使用量が少ない為、残念ながら真似の出来る芸当ではない。
Copyright (C) 2001-2019, Vic Ohashi All rights reserved.