HOME
サイトマップ
アマ的手法
材料
工具
作品一覧
リンク
mini-Shop

防音、遮音、吸音
 
2006/06/30 (以前D.I.Y.雑談に含まれていたものを再編集しました。)

日曜大工のテーマの中に防音、遮音、吸音などのテーマが出てくることがある。 住んでいるところが戸建てであろうがマンション住まいであろうが隣から漏れる音、部屋の間の遮音、屋外の騒音の遮断などに寄せる関心は非常に高い。 私自身はそれらに関するエキスパートではないが、私が知りえた範囲内で日曜大工において参考になりそうなことを解説したいと思う。

さて防音、遮音、吸音は少しずつ技術的には違ってくるのだが、「余計な邪魔な音を消そう或いは抑えよう!」という点は共通している。  そして音及び音の性質や物質の伝播に関する基本知識を知っておいた方が良くそこから音を消すヒントが生まれるので、先ずそれらを簡単に説明してみたい。

1 音の性質

  1-1 音は空気を含む物質の振動の形で伝播し耳に到達する。
  1-2 音の伝播のしやすさは物質により変化する。


2 音と物質の関係

  2-1 物質を叩いた時の音の高さ、大きさ、音色などは物質によって変わる。
  2-2 叩いた時の音の大きさ、高さが低く余韻の少ない物質ほど遮音効果が高い。
  2-3 同じ物質でも重いものの方が遮音効果が高くなる。
  2-4 遮音効果はあっても音をよく伝播する物質がある。
  2-5 音を吸収しやすい(吸音)物質がある。
  2-7 共振周波数がかなり異なる2つの物質を密着すると、互いの振動が抑制されて全体として振動しにくくなる。
  2-8 空気自身の遮音効果は低い。
  2-9 より積極的な吸音としてヘルムホルツ共振を利用した方法がある。


3 部屋間の遮音/防音

  1 例え目に見えなくても部屋同士がが空気が繋がっているような隙間があると遮音効果が激減する。
  2 部屋と部屋の仕切りは重量(密度が高い)が重く分厚いものを考え、間に空気層があると遮音効果が高まる。
  3 それが無理なら音の響き方の違う材料を貼り合わせたサンドイッチ構造とする。
  4 壁の空気層に吸音材を詰め込む。

  などの方法を組み合わせる。 これらは部屋を仕切る壁のみでなく1階と2階の間の遮音でも同様だが、この場合2階でドスン
  ドスンと歩き回る音は床板が振動し、根太、柱、梁等を通じて1階に伝わるので、部屋同士の遮音よりも対策は厄介だが、

  ・ 床板の裏に鉛板を密着させる
  ・ 床をカーペット仕上げとしカーペットの下に厚めのフェルトを敷く
  ・ 床板の上にコルク板を貼る

  などを併用すればでかなりの効果がある。  天井裏にグラスウールを入れる程度ではドスンドスンには殆ど効果がない。 

余談ではあるがマンションに住む友人が、ピアノの音が下に響かないように考えた方法として、「部屋の中に密閉度の高い部屋を作ってピアノを入れ、その部屋を厚みが20cmはあろうと思う硬質ゴム脚で床から浮かす。」という傑作にお目にかかったことがあるが、その位に下の階に音を伝えない方法は難しい。

参考図: 




4 外部との遮音/防音

家の外部への音の漏れの防止または外部騒音の遮音(防音)も、基本的な考え方方法論は部屋と部屋の間の遮音・防音と同じだが、決定的な条件・環境の違いがあり、十分な効果を得るのを難しくしている。 

その一番の違いは換気装置の存在である。 建築基準法では居室の場合床面積の1/7以上の採光面積の窓がなければならないので窓の全くない居室は作れない。 この窓が曲者で外部との隙間(空気漏れ)とガラス板そのものが遮音効果を台無しにしてしまう。 これをなんとかしないといくら壁の遮音効果が高くても、総合的な遮音効果はかなり落ちてしまう。 

対応方法としては、防音用に気密性を高めたサッシを使い、窓ガラスは二重構造として間の空気層を真空にする等の特殊な材料が必要となります。 これらは日曜大工の範疇で実施するのはかなり難しくなる。 また換気扇、バランス式のガス暖房機、窓に取り付けるタイプの冷房機などは、屋外と部屋が空気で連結されている構造なので遮音効果を大幅に悪くする。

私の住んでいるところは厚木基地に近く軍用機の離着陸による騒音公害の大きい所ですが、防衛庁が実施した防音工事用の換気扇もその効果はかなり少なく、なによりも全体として爆音の低減効果も期待した程ではなかった。 よって日曜大工的な外部騒音の遮音はきわめて難しいと言わねばならないが、日曜大工的範疇での軽減策(気休めかもしれないが?)の例を上げておきたい。  

  1 窓を閉めたときに隙間が出ないようパッキンなどを貼ってやる。
   遮音・防音の第一はなんといっても空気漏れの防止でにある。 ホームセンターに行くと色々な隙間を埋めるパッキンの類い
   を売っている。 これらの本来の目的は隙間風の防止のようだが、気密性を高める点でも結構効果のあるものがある。

  2 窓ガラスにダンピング用のシールを貼る。(ここで言うダンピングは制動の意味で値引きのことではない?!)
   アメリカに滞在中そのようなシールを売っていた。 厚さ0.5mm位の透明なフィルムで、ガラスに貼った後はガラスを叩いても
   ガラス特有の響きが押さえられ、余韻も短くなる。 つまり2-2で述べた理屈による遮音効果があるわけでで、コンクリートほ
   どの遮音能力は期待できないがガラスに何も貼らないよりはかなり効果があることを確認している。

  3 窓のカーテンを織目のつんだ分厚い材料とする。
   比較的高い周波数の音を外部に出さない効果が若干ある。


5 吸音について。
吸音はこれまで述べてきた遮音や防音とは目的がまったく異なる。 遮音・防音が隣の部屋や外部に音を伝えない(或いはその逆)ことに目的があるのに対し、吸音はその部屋の中での音の響き具合を良くするためのコントロールという点にある。  音の響き具合を良くするりというのは何を指すかというと、残響時間のコントロールと特定の音だけが響き過ぎないようにする点にある。

人間が音に対して心地よく感ずるためには音の残響時間がある範囲に入るのが望ましいとされている。 極端な例だが、トンネルの中で発生した音は、ウワーンと響き渡り長時間いると大変疲れますし音の明瞭度はかなり低下する。 逆に全く残響が無いような空間(無響室)などに入ると、言いようの無い不安感に襲われてきてこれまた長時間居られたものではない。 従って残響時間が長くても短すぎても人間にとっては心地よいものではなく、残響時間をコントロールして音響的に良い状態は人体にとり生理的にも良いことになる。

部屋にはある周波数で音がよく響くポイントがあるが、これは部屋の形、寸法、壁/床/天井の音の吸収/反射の度合いなどで決まる。 この現象を観光名所としている例が日光東照宮の鳴き竜ですが、一般には音響効果上芳しいものではない。 
これを音響工学上は定在波と呼ぶが、これと残響時間のコントロールがリスニングルームでは重要である。 定在波を押さえる基本は、部屋の寸法比が最大公約数を持たない値(5:4:3とか7:5:3のような値)にすること、実現可能なら対面する壁あるいは床と天井が平行にならないようにすればよい。(コンサートホールの平行面のない構造はこの理屈による。) 特定の周波数での響き(定在波)が押さえられたら残響時間をコントロールするのだが、吸音効果のあるもので壁面を仕上げたり、グラスウール、フェルト、厚手のカーテン等吸音性のあるもので壁面を覆えばよい。  また前述2-8の理屈(ヘルムホルツ共振)を応用したものとして、穴が沢山あいた合板を貼りその裏には空間を設けて吸音材を詰め込む方法、吸音箱の設置、傑作な所では色々な瓶を並べる、なんていう手があります。 但しこれらの吸音による効果は設計どおりにはなかなか行かないのでカットアンドトライとなることが多い。

  スピーカーの箱の響きと吸音
  蛇足だがこれも吸音のテーマのひとつなのでスピーカーの箱について少々触れたい。(日曜大工でスピーカーボックスを作ら
  れる方も居ると思う。)
  スピーカーの箱の基本はスピーカーユニットの背面から出てくる音を遮断することにある。
  従ってスピーカーの箱は遮音特性の高い構造とすればよいわけだが、音という主観の世界では響きをよくしたいという考えに
  根ざした単純に音を遮断するという考え方ではない物が名機と言われたり、評判のよいスピーカーに多いことも事実だ。

  かなり前のことだが、スピーカー背面の音を完全に遮断してやろうとスピーカーの箱としてコンクリート製の大きな土管(内径
  60cm、長さ90cm位で容積250リットル程度だったと思う。)の開口部分を30mm厚程度の板で塞いでスピーカーを取り付けて
  鳴らしたことがあるのだが、同じスピーカーなのにも拘わらず元の箱のときの音とは異なり、主観判断では無味乾燥で潤いの
  ない音になってしまい箱の響きの大切さを知った経験がある。

  オルゴールの箱やバイオリン、ギター、ピアノなどの木工部分は、良い音の響き(共振)を得ようと工夫されたものの実例だ
  が、その為に作る材料、形、構造、接合の仕方、使う接着剤、塗料等など沢山のエレメントが響きの良さを決定するものとして
  複雑に重なり合っており、良いとされる物には名人芸の技がふんだんに仕込まれている。
  スピーカーボックスについても同様で一般には材質が一番重要とされており、目のつんだ単材(ムク板)がよいとされている
  が、単材は高価だけでなく反りの問題があるので、日曜大工的には、合板、集成材、チップボード、MDFなどの方が製作しや
  すい。(メーカー製の箱は成形品も作りやすいMDFが一番多いようだ。)

  非常に感覚的な表現で恐縮だが、箱となる材料を握りこぶしで叩いてみた時の音が好ましい音かどうかでおおよその判別が
  つく。 単板の目のつんだものは、カツカツとほんの少し余韻を残す傾向があるが、比重の小さなラワン合板になると、カツカツ
  ではなくてコツコツ、ポコポコとかのような音の傾向となる。 もっともポコポコと鳴っていた板材も貼り合せてあちこち補強して
  行くとカツカツの方向へと変わるので、一概にラワン合板では駄目と決め付けられないが。 このカツカツという感じの音はスピ
  ーカーの音を明るく明瞭度を高める方向に働き、ポコポコ、ボコボコなどの音は明瞭度を悪くし水ぶくれ的な音質になる傾向が
  ある。  また箱を作る際は定在波を抑えるため縦、横、高さの内寸の比が最大公約数を持たない値又は整数とならないよう
  にしたい。 残る定在波と箱の響きをコントロールするために内部に吸音材を入れるのだが、吸音材の入れすぎは前述の土管
  スピーカーと同様つまらない音となる傾向にある。

主観的な判断、感覚的な問題、そして好みの問題が入ってくるので、響きのコントロール(吸音)は遮音・防音より遥かにファジーな世界といえるかもしれない。

Copyright (C) 2001-2017, Vic Ohashi All rights reserved.