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花  台
2002/08/29
 この作品は私が日曜大工教室の講師を引き受けて最初に掲げたいわ
 ば記念すべきテーマですが、結構内容にこだわりをもっています。 
 そのポイントは、

 1.ネジ、クギなどの頭を一切見せないような構造としたこと。
 2.塗装仕上げを良くする為塗装してから最終組み立てをした。


 の2点にあります。

 無論初心者用のテーマで少々凝りすぎたかな? との感があります
 が、加工の誤差が多くてもものになるという点は、初心者用として大変
 適したテーマだったと考えており、実際及びこれを作られた方々及び
 その後家族、友人などは大変吃驚されたそうです。

 詳しくは以下に説明しますが、

 1.クギやネジの頭を見せない接合の方法。
 2.板と板の貼り合せの方法。
 3.組み立てる前に塗装を済ませる方法。


 等のテクニックは他へも応用が利きますので注意してごらんいただき
 たいと思います。

 大きさは天板が20cm四方の正方形から切り出した8角形、台板は
 30cm四方の正方形から切り出した8角形で、高さは439mmありま
 す。 教室で配布した部材の寸法は12mm厚サブロクのシナ合板で
 4台作れるぎりぎりの寸法としたためこのようになっておりますが、各
 寸法を変更することは無論自由です。

材 料

 1.シナ合板
   手に入りやすい合板の中でもっとも表面が美しいシナ合板を採用しています。 表面にシナに薄い板が貼られておりきめが
   細かくてニス仕上げとすると大変すばらしい感じになります。 厚みは12mmですが台板には薄すぎるので2枚貼りあわせて
   24mmにします。 

 2.36mm隠し釘又は普通の25mm釘16本
   組み上げると見えなくなってしまう部分に釘を使用して接合します。 私の本文では隠し釘を使っていますが、通常の釘でも
   差し支えはありません。

 3.木ダボ(6mm)
   台板や天板に柱を接合するのに木ダボを使います。 長さ30mmのもの8本をジグソーで半分に切って使用します。

 4.塗料
   和信ペイントの油性ニスを使います。 この材料は最近では非常に多用する私のお気に入りのものとなっています。 
   使用量の少ない工作物にはもってこいで、着色剤も入っていますので塗装工程も短縮できます。 今回使った色はローズで
   それらしい色にするには3回塗りが必要ですが、色については好みの問題もあり2回塗りでも十分美しくなります。

使う道具・工具

 1.ノコギリ
   手引きノコギリでも切れないことはないのですが、電動ジグソーを使った方が効率よく切れます。(直線性はさほど問題となり
   ません。)
   応用編にある曲線を含む構造の場合には電動ジグソーが絶対に必要になります。

 2.木工ヤスリ
   ノコギリで切断後の成形に木工ヤスリがあると作業がはかどります。 なければ#120位の紙やすりで代用できます。

 3.紙ヤスリ
   成形が済んだ後の塗装前の仕上げに紙ヤスリを使用します。 #240が適当ですが、2回塗り、3回塗りの前には#400
   紙ヤスリを使用します。

 4.木ダボ穴あけ用ドリル
   6mm用の穴あけジグとセットになったものが必要です。

 5.曲尺(指金)
   線を引く、直角が出ていることを確認する、などに使用します。

 6.玄翁
   釘を使った接合時と組み立て時に使います。

 7.クランプ
   台板の張り合わせ時に密着度をあげる為使います。 ここで使用するのは50mmのものです。


 設計

 左が設計図です。 
 詳細は省きますが、サブロク合板で4セット作れるようサイズを調整してい
 ますので好みにより変更しても構いませんが、面白いもので高さ45cm前
 後というのはマジックナンバーと言うか様々なものの適当な寸法になりま
 す。 
 天板と座板の最大幅はそれぞれ20cmと30cmの正方形から作る正八角
 形の対角線となっています。 柱はL字型に組んだ4本を図の点線の位置
 に固定しますが、縦真中はに向こう側が透けて見えるちょっとおしゃれな
 構造としています。
 その固定には木ダボを使い全く釘やネジの頭が見えないようにします。 

 座板は2枚の12mm合板を重ねて貼りあわせ24mmとしています。 無論
 24mm合板から切り出しても良いのですが、材料の無駄が多くなるのでこ
 の方法をとりました。




















 加工

 日曜大工教室では右図のようにプレカットしたものを用意
 しました。 無論これらの切り出しを自分でやっても良いの
 ですが、正確なカットを要求する部分が多いので初心者は
 この図のとおりにホームセンターで切断してもらうと楽だと
 思います。

 プレカットした部材を更に切断加工してゆきます。
 詳細は以下の写真とそれに伴う注釈を参考にして下さい。





プレカットされた材料。 左のL字型柱となる幅の狭い4枚をそれぞれ縦割りします。

電動ジグソーで縦割り中の板。 前回紹介した工作台上で加工していますが、スリットがあるため大変作業がしやすいです。

縦割りが終了した柱の材料8枚。 切断時の曲がりなどはカンナ、木工ヤスリで修正します。
 
幅狭の板の上に幅広の板を木工ボンドと釘を使い接合します。 写真では隠し釘を使っていますが、普通の釘で結構。
台座を貼り合せる為に木工ボンドを塗りました。 出来るだけ薄く延ばしましょう。

2枚の台座を重ねてクランプで4隅を締め上げますが、クランプの凹み傷がつかないよう木切れを挟んでやります。 こうして2時間以上寝かせたら切断に進みます。

天板は角から59mmの点を、座板は角から88mmの点の隣どおしを結ぶと正八角形となります。 (正確には、(正方形の1辺)÷3.41が、正方形の角から正八角形の角となる距離です。)

切断・予備接合が終了した6つの部材です。 この後に塗装となりますので十分な仕上げをしましょう。 切断部分の成形は木工ヤスリで粗仕上げをし順次細かなヤスリに変えて最後は#240のペーパーで仕上げます。 触ればつるつるした感じになります。



2002/09/5
塗 装

初心者の日曜大工において最も適当と言うか手抜きをしてしまっている作業に塗装があります。 仮に塗装を省くことなく実行していてもその仕上がりは満足できないものが多いようです。 
塗装のテクニックについて説明し始めたらそれこそ限りありませんが、基本的に押さえねばならないことを列挙しますと、

1.塗装は時間が掛かると考えるべし。
  後述するように塗装には乾燥と言う作業ではありませんが時間の掛かる工程が含まれており、完了するまでには結構時間が
  掛かります。 これを省こうとすると塗装の質を落とす結果となりえますので、塗料の種類により所要時間は変化しますが意外
  に掛かるものだと言うことを覚悟する必要があります。

2.1度塗って終わりという塗装はまずない。
  プラモデル(プラスチック)や金属面の塗装とは違い木材の塗装が1度で終了できることはまずありません。 原因は木材が塗
  料を吸い込む為に表面が十分に滑らかにならないこと。 そして塗料を吸い込んだ木材の繊維が膨張し毛羽立ちの原因とな
  り、塗装前につるつるに仕上げたはずの表面はざらついてしまうからです。 それらのざらつきを取り除き重ね塗りをして初め
  て表面が滑らかになり、艶が出てきます。  従って2回塗りが最低必要と心得ましょう。

3.重ね塗りの前に十分乾燥時間が必要。
  重ね塗りの前には細かいサンドペーパー(#400くらい)で表面を研磨することが必要ですが、その為には塗料が完全に乾燥し
  ていなくてはなりません。 一般に指で触ってべたつかなくなったら乾燥したと考えるようですが、私は溶剤を始めとした塗料
  そのものの匂いがなくなったら乾燥した。と考えています。 しかしこれでは時間が掛かりすぎるのと私の場合塗料をシンナー
  で薄める為、塗料メーカーが規定する乾燥時間の2倍としています。 因みに今回使用する和信ペイントの着色ニスは夏で3-4
  時間、冬で5-6時間と指定されています。
  また1回目の場合には塗料が木材に染み込むこともあり使う塗料は大目となるため乾燥時間は長くなります。

  こういったことから以下に述べる塗装作業での乾燥時間は、1回目は15時間、2回目以降は10時間としてあり3回塗装の為に
  は乾燥時間だけで35時間掛かります。 従って週末土・日の2日間で塗装を終わらせようと言うのは不可能です。

4.厚塗りは絶対厳禁。
  厚く塗られた塗装の典型として漆器がありますが、あれは何度も薄く塗り重ねた結果であり厚塗りによって得られるものでは
  ありません。  意識的に厚塗りしますと塗装膜の厚み斑は大きくなりますし、表層と深層の乾燥時間の違いが大きくなる為
  縮み皺が出来やすくなります。 これらは次の塗装前の研磨では取りきれませんので、塗装斑となって残ってしまいます。 
  無論乾燥時間も大幅に伸びてしまいます。 綺麗に仕上げるコツのひとつは、「薄く重ね塗りする。」に尽きます。

5.同じ所を何度も何度も塗り返さないこと。
  塗装した最も表面の部分は1分も経過すると硬化してきます。 そこを塗りなおすことは硬化して来た塗膜と新たな塗料が混じ
  り半固まりと液体状のごっちゃが塗装斑の原因となります。 従って1分以上たったらどんなことがあっても塗り直さない。
  これが原則です。 塗装し残しは次の重ね塗りのときに修正します。

6.塗装順序を良く考えて始める。
  塗装のしにくい部分から塗装しやすい部分へと作業する順序を考えます。 塗装のしにくい部分は、窪みなどですが木口
  もその両端の面に塗料が周り易いため塗りにくい部分に入れます。 また塗装する面は、目立たない部分目立ちにくい部
  分
非常に目立つ部分に分けられますが、この順序で塗装してゆきます。
  目立たない部分は乾燥する際に塗装した物をテーブルなどに置いておくときの接触面にすると全体の見映えが良くなります。

7.塗装方向は木目の方向。
  最近の塗料は大変進歩して刷毛目が目立つことが少なくなりました。 しかしミクロンレベルでは相変わらず刷毛目が残りま
  すので必ず木目方向に塗装しましょう。 こうすることによりまず刷毛目は見えなくなります。

前置きはこのくらいにして今回の作品の塗装を一連の写真でお目にかけます。

天板の裏面と座板の表面には塗装しない部分にマスキングテープを貼る為、シャープペンで線引きをします。
詳細図面はこちらです。

マスキングテープで全て覆った所です。

マスキングテープを取り去る部分をカッターナイフで切り取ります。 L字状4箇所のマスキングテープが残ります。
 
塗装前に塗料(和信ペイント着色油性ニス ローズ 120ml)はペイント薄め液を10%加えます。 
L字状の柱から塗装開始。 木口をまず塗ります。

次に外側となる面を塗装します。 最後に木口です。 裏面は殆ど見えなくなるため2回塗りとするので今回は塗装しません。 (見え易い表面は3回塗りです。)

4本のL字状柱の塗装が終わりました。



天板の塗装は始めに木口を手早く塗ります。 どうしても両側に染み込んだりたれたりしますので、もたもたしていると塗り斑の原因になります。

表面(天板はマスキングテープを貼らなかった側です。)を塗装します。 木口からのにじみ、垂れが斑となって残らなければOK. 逆に木口に塗料が垂れないよう注意します。

座板も天板と同様な手順で塗装しますが、当然ながら表面はマスキングテープを貼った面です。

表面の1回目の塗装が終了しました。 この状態で15時間放置します。 塗装開始が夕方でしたので翌日の昼前まで寝かせました。

塗装と塗装の間は刷毛が固まらないようざっと薄め液で洗った上でサランラップで包み乾燥しないようにします。 正式には多量の薄め液で完全に塗料を落とすべきですが、薄め液がもったいないのでこの方法をとっています。

塗装面は木材繊維が立ってざらつきますので#400のサンドペーパーで軽く研磨します。 このあときつく絞ったタオルで表面の研磨屑をふき取り30分乾燥します。


表面の2回目の塗装の前に裏面の1回目の塗装を済ませます。 その後3時間寝かせます。

表面の2回目の塗装です。 塗装手順は1回目と全く同様ですが、木材に染み込まない分使う塗料はぐっと減ります。 この上に見える1回目の塗装終了後と比較すると色調が濃くなっていることがわかるでしょう。 

このあと10時間寝かせます。 裏面は塗装後3時間でひっくり返しましたので若干痛みの発生する部分も出ますが、普段目に付かない部分ですから大過ないでしょう。  次に裏・表を#400のペーパーで研磨し、裏面の2回目の塗装(3時間寝かせる)、表面の3回目の塗装(10時間寝かせる)で塗装作業は終了します。 それらの作業手順は全く同様ですから省きます。



2002/09/12
組み立て

3回塗りの塗装が終了し最後の作業である組み立てに入ります。 
ここで採用する組み立て方法は木工ボンドと木ダボを併用したもので、普通アマチュアがやらないどちらかというと高等技術ですが、道具の進歩で比較的簡単に出来ます。  その特徴は釘やネジを使わない為それらの頭が全く見えないことで出来栄えは最高です。

ネジを使った接合に比べると接合力は落ちますが、この場合には接合部分に掛かる力は圧縮力だけですから、きちんと接合しさえすれば問題ありません。 クランプやハタガネを使い密着度を上げれば接合力は改善されますがこの作品の場合そこまでする必要はありません。

鍵は如何に木ダボを正確に取り付けるかですが、木ダボ位置決めジグを使って簡単に出来ます。  詳しくは例によって以下の一連の写真と説明をご覧下さい


6φ木ダボセット。 専用木工きり、穴位置ジグ4個、木ダボがセットになったものです。 他のサイズもあります。

天板と台座のマスキングテープを剥がし、6φ30mm木ダボ8本を半分に切断し約14mmの木ダボ16本を用意します。

木工きりの先端から10mmの位置にビニールテープを巻き穴あけ深さの目印とします。

 
細心の注意を払いながら穴あけをします。 キリに巻いたテープが板面に触れたら終了。
穴位置は幅方向の中心に、 数は各柱に対し2個です。

天板の裏側、座板の表側それぞれに計16個の穴あけが完了しました。

柱の位置を特定する為マーカーで印をつけます。塗りつぶしが座板側、中抜け丸が天板側としました。 また座板と天板では色の順序が反対になります。

柱が固定されるダボ穴2箇所に位置決めジグを嵌め込みました。

柱を当てて位置を決めます。 標準はL字型の内側の線に沿わせます。
(こうするとマスキングの幅が10mmで板厚12mmに対し未塗装部分が見えてしまうことが発生しないからです。)

位置決めジグでついた円錐状の凹みが見えます。 また同色のマーカーで印を付けておきます。

位置決めの終了した柱4本。 左側2本は座板に接合される側で、右2本は天板に接合される側が見えていることになります。

専用きりで柱に穴あけをしている所です。 柱に対し垂直な穴あけをするにはこの方法が有利ですが、電動ドリルの重みで穴位置が下にずれやすいので、電動ドリルをしっかり支えます。

木屑を払いのけてから各穴に少量の木工ボンドを流し込みます。



各穴に木ダボの切断面から挿し込みます。 そのあと玄翁で軽くたたき穴の底まで届くようにします。

柱の木口に木工ボンドを塗り各穴に挿し込んでゆきます。 位置を間違えないようご注意。



同様にして天板に木ダボを接着し柱の状面に接着します。
接合が終わったら天板の上からまた逆さにして座板の裏から力をかけて十分に押し込むと同時に傾いた取り付けとならないよう調整します。 この間の接合作業は手早くします

その後はみ出たボンドを濡れ雑巾で拭い取り終了です。




4時間寝かせたら接合部分は殆ど完全に硬化します。 
右は完成写真です。(写真クリックで拡大します。)


あとがき


この作品は作りやすさを考えて直線の組み合わせとしていますが、
天板と台座を円形に切断したり、柱も曲線を入れることにより様々
なバリエーションが考えられます。 

右の写真はその一例で天板と台座を円とし、柱も下部でラッパの
ように広がるような形としました。 
これだけの違いで随分代わった形というかよりデザインされたよう
にみえますが、基本構造は全く同じです。
但し曲線がかなり多いので製作難易度は高くなります。

ところで右の例は色が薄いように見えますが、2回塗りの為であり
上記製作の例の3回塗りの深みにはかないません。

それとこの作品の柱の隙間構造を上手く応用する方法として、
フロアー電気スタンド等への発展も考えられますし、こういった構造
が基本的に有している釘・ネジが一切見えない、柱の間に何かを
隠せる(例えばケーブル)。 といった利点を生かした応用例は、
他にも色々考えられると思います。 
----- 完 -----












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