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木材の反りについて 1
2005/01/14
折角苦労して作った作品が材料の反りで台無しになったとか、製作途上で反りの為にどうしてよいか判らないため立ち往生なんていう経験をお持ちの方がおられると思う。 そこで反りが発生する原因とその対応策についてアマチュア的な解法を2回に渡りご紹介したいと思う。
木材は何故反るのか?
天然の木材
(ムク材)
のみならず人造木材
(合板、集成材、MDF、OSB、チップボード)
など何れの材料も出方や大小は別として必ず反りが発生すると考えた方が良い。 木繊維は吸湿性があり湿度の変化で水分を含んで膨張したり、逆に吐き出して収縮をする。 この膨張・収縮が均一になされれば反りの発生は起きないが、現実は部分部分で膨張・収縮の度合いが違うため反りが起きる訳である。 従って吸湿性を完全に遮断しない限り(ミクロのレベルまで考えての話だが)膨張・収縮を止めることは出来ないし、反りを無くすのは不可能だ。
反りの話に入る前にこの湿度変化による膨張・収縮もかなり問題になる場合があるようだ。 数年前のことだが、ある木材の展示会を訪問した際に参考出品してあったOSB材が伸び縮みを抑えたものとして従来のものとの比較説明をしていた。 その説明によると3 x 6のサイズで従来タイプは何枚も敷き詰める際に、OSB同士の間隔は5mm空けないと膨張した時に問題を起こすが新製品はほぼ隙間なく敷き詰めても問題を起こさない! というものだった。
これが事実とすれば木材の湿度変化による膨張もかなり大きな量であることになる。
ムク材の反り
ムク材で発生する反りの原因は表裏で膨張・収縮の度合いが異なることによる。 何故表裏で膨張・収縮が異なるかと言うと、表(専門用語では木表と言い、木の表皮に近い方の面を言う。)では木繊維の密度は低く、水分を根から吸い上げて木の上に導く導水管の本数が多く太い。 要するに木の外周に近い方が水分を多量に含んでいるわけだ。 一方中心になると木繊維は密度が高くなり、導水管の量は少なく太さも細い。 水分の含有量が少ないわけだ。
この木の構造的な特徴は次の話で十分理解できるであろう。
木の洞をご存知だろうか? 私が小さい頃神社の境内で、根元に空洞のある数百年以上を経た大木でよく遊んだ記憶がある。 しかし大きな空洞があるにもかかわらず木の上のほうは枝が伸びて葉も繁り大変元気だった。 これは上述の木の性質により木の周辺が元気であれば木の上に水を吸い上げられるからである。
このような木から板を切り出す際には左の図上のように切断するわけだが、切断した板が乾燥
してゆくと左の図下のように板は収縮する。
これらの図は私がフリーハンドで描いたもので、正確さという点では少しおかしな部分がないで
はないが、特徴的な部分は描き表したと思う。
それは中心に近い板材
(柾目)
は周辺部が薄くなるように収縮するのに対し、外周に近いところ
から切り出した板材
(板目)
ほど反りが大きく発生し反り方は外周側
(木表)
が凹面になる!とい
うことだ。
その理由は丸太の表面に近い方は木繊維密度が粗く水分を
多量に含むため木繊維密度が高く水分も少ない中心部よりも
より縮むことによる。
丸太から切出した板は必ずこのように反りが出るわけで、中心
部の柾目の部分といえども反りは出ないにしても板厚が中心と
端では変ってしまう。
これらの板を充分に乾燥させてからカンナを掛けて平らにすれ
ば、その後の湿度変化で発生する反りは大幅に軽減されると
いう仕組みだ。
切り出した板がどのように反るかについては断面の年輪を見れ
ばすぐわかる。
「年輪の曲率が大きくなるように反る!」
或いは、
「木表がへこむように反ってくる!」
と覚えておけばよい。
こういった丸太の反りは我々の想像をはるかに越える量であり、実際に建築に使う柱や梁などの断面に
は年輪に対して放射方向のひび割れが収縮のために発生する。
これを軽減するため柱の見えない裏側に
「背割り」
といって縦の切込みを意識的に入れ収縮によるひび
割れが発生する場所を指定するような工夫がされる。 右の写真は床柱などに使われる
「絞り丸太」
の
端材だが、中心部では
4mm
の隙間の間隔が外周部では
16mm
に広がっている
(丸太の直径が約11cmなので、3.5%も外周は縮んでいることになる。)
人造材の反り
天然材では得られない幅の広い板の需要や木資源を有効利用しようとの目的で人造木材は多種多様だが、それらの材料でも反りは存在する。 セールストークではこれら人造木材は反りが出ない!と言っているものの正確に言えば、
「同じ大きさのムク材に比べれば反りの出方が少ない!」
と理解すべきであり、反りがない!と決めて掛かるのは早計である。
原因は乾燥不十分、素材の木繊維密度不均一といったムク材の場合と同じ原因に、接着剤やチップを固める材料の不均一による原因も重なり、絶対量は少ないとは言えかなり複雑である。 特に集成材では反りに留まらず収縮・膨張の不均一から剥がれや割れが出る可能性もあるので、充分注意した使い方をする必要がある。
(詳しくは次回に述べる。)
反りを矯正する方法はあるか?
残念ながら見栄えに全く影響しない方法はないと言わざるを得ない。
前述のように反りの発生原因は板材の表裏或いは部分部分で木繊維の密度が違う点にあるので、それらの密度の差を小さくするしかない。 その方法は十分な乾燥である。 乾燥すると木繊維は縮んで来るのと同時に、再び水分を吸い込んでも完全に元の大きさに戻らなくなり、これは繊維密度の差が小さくなったことになり、反りが出ても一度乾燥した木材はその量が少なくなるからである。 楽器を作る木材やムク材を多用する高級家具では、材料の乾燥に大変時間を掛けるのはこの為だ。
これらの板材乾燥は我々が購入する前の作業であるので、我々が取り得る防止策としては購入時にその材料の乾燥度合いが十分であるかどうか? の確認と、現物を眺めつすかしつしてそりの少ない物を選別するという消極的な手がない。 乾燥具合については実際のところ随分ばらつきがあるようだし簡単には判別がつかない。
ある意味ではその店の信頼性にゆだねねばならないところだが、安売りのツーバイフォー材などでは明らかに乾燥度合いが低いと思われる物が平気で売られているのを時々見掛ける。 こんな材料を購入すると購入当時は反りがなかったはずが、製作中の間の乾燥で反りが増大なんてことになりかねない。
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