2006/06/30 (以前D.I.Y.雑談に含まれていたものを再編集しました。)
一昔前に比べると釘やネジの種類が非常に増えている。 そういった環境の現在では日曜大工における木と木を固定する材料としての釘やネジの選択も大幅に変わってきてしかるべきである。 その様な観点から釘とネジのことに付いて今回は触れたい。 尚木材以外に使われる釘やネジもあるがここでは木材用に限定する。
釘の種類 (右写真クリック)
我々にとっては一番馴染み親しんだ固定用の材料だが、次のような釘が存在している。
普通の釘: 締めつけ力が低下しやすい。 軟鉄の場合安いが表面処理なしのため錆び易い。
スクリュー釘: ピッチの粗いネジを切ったもので、締めつけ力は高いが抜きにくい。
隠し釘: 木工ボンドと併用し固着後頭約5mmをカットして見えにくくする。
仮釘: 木工ボンドと併用。固着後引き抜くが径が細いため穴が目立たない。
フローリングボード釘: スクリュー釘の1種。 頭が小さくネジ部分にかえしがあるので最も引き抜きにくい。
以上の釘を作る材質として軟鉄、ステンレス、真鍮、銅があるが、軟鉄の場合錆止め処理のため、ユニクロ鍍金、クロメート鍍金、ニッケル鍍金、クローム鍍金等があるが、ユニクロ鍍金、クロメート鍍金がポピュラー。
一方のネジのほうは雌ネジ無しで固定できる木ネジ系と、固定にナットを使うタイプ(ボルト・ナット)に大別される。
木ネジの種類 (右写真クリック)
木ネジ: 全体にゆるいテーパーがあり、最もポピュラー。
タッピングネジ: 先の一部のみテーパーで、残りは直径が一定。 木ネジより締めつけ力高い。
コーススレッド: ネジピッチが粗く先をナイフのように加工してあり下穴無しで食い込みやすい。
スレンダースレッド゙: コーススレッドを細身(3.3-3.5φ)にし、薄板締結や造作用に適している。
以上のネジを作る材質として、軟鉄、ステンレス、真鍮があるが、軟鉄の場合には錆止めの処理として釘の場合と同じような処理がされる。 更にネジの頭の形状から、
平皿: 頭が皿状かつ上が平らなもので非常にポピュラー。 木材の場合締めつけ面と同じかそれ以下に埋まる。
なべ: 頭が鍋を逆さにしたような形状でこれも非常にポピュラー。 締めつけ面で止めるのが原則。
トラス: 頭はなべネジより厚みの薄い曲面で締めつけ面で止めるのが原則。
丸皿: 皿ネジの面が曲面となっており、装飾性を考慮した物。
ラッパ: 平皿に似ているが、締め付け面で止め易い様ラッパ状となっている。 コーススレッドの頭に使われる。
ボルト・ナットの種類
メートル系: ISOネジとも言われ、表示にMが付されていてミリ単位。M4-30は、直径4mm長さ(鍔から)30mmを表す。
インチ系: ウィットネジともいわれるが、表示がWで始まり太さはインチの分数表示、長さはmm表示である。 W3/16-30は、
太さが3/16インチ = 3/16 x 25.4で4.76mm、長さは30mmとなる。
メートル系とインチ系の間の互換性は全くない。 ネジピッチが僅かに違うのだが、無理してインチネジのナットにメートルネジのボルトを締めつけてもまともに締まらないし、無理すると緩まなくなったり、最悪の場合にはボルトが折れてしまうので要注意である。
これらのネジの材質としてユニクロ/鉄、クロメート/鉄、ステインレス、真鍮、プラスチック等が使用され、頭の形状では、平皿、なべ、トラス、丸皿、六角、へクス等があり、頭の全くない寸切り(ズンギリ)ネジもある。
六角とへクスは本来の意味は同じだが、ネジの場合、六角は六角形をした頭をスパナで締めるタイプで、へクスは頭の内部の六角穴に断面が六角のレンチ(ヘクスキー)を指し込んで締めるタイプという違いがある。 後者は装飾性を重視したネジである。
組み合わされるナットは、六角ナットがポピュラーだが、袋ナットというネジを包み込んでしまうタイプ、雌ネジを木部に形成するための爪付ナットや鬼目ナットがある。 タッピングネジの場合には下穴をあけてそこに捻じ込むことにより雌ネジを切り込んでくれる。
以上のような沢山の選択肢がある釘・ネジの中で、我々の日曜大工でお勧めな物は次の通りである。
1.原則として木ネジを使う。
釘は最も歴史のある固定材料だが、私は釘を殆ど使用しない。 その理由は何と言っても緩みやすいという欠点であり、木材
同士を接合する力が弱い。 実際私の家を12年前にリフォームしたときや、近所で家の建設現場でも気がついたことだが、大
工さんがネジを非常に多用しているのを見かけた。 それらの理由を聞いてみたところ、「釘は緩むから。」という答えが返っ
てきた。 それを真似て私も釘の代わりにネジを使い出したのだが、これが実に具合がよろしい。 更にありがたいのは、小さ
な失敗の多い我々日曜大工にて、「ネジを間違って締め込んでも、簡単に緩められてやり直しができる。」ことは大変
なメリットであるし、緩まない!と、簡単に緩められる!との全く相反する条件を完璧に満たしてくれるのである。 釘の場合
でも、緩まない!という条件を満たすのであれば、スクリュー釘の採用が考えられるが、この場合には簡単に緩められない。
というか、強引に抜こうとすると木材をかなり痛めてしまう可能性が高い。 従って殆どの場合ネジを採用したほうが良い。
2.日曜大工でお奨めのネジ
私が使うネジで最も多いのはスレンダースレッドと言う細身のネジだ。 長さは25mmから75mmまで5mm刻みで、50mmまで
は太さが3.3φ、その上は3.8φである。 先にも触れたように薄板の締結や造作用に考えられた物であるので、屋内使用の工
作物全般と屋外でも厚みの薄いワンバイフォー材使用の工作物に最適である。
締め付けには電動ドライバーが不可欠だが、50mm程度までの長さであれば、最も低価格で軽作業用のもので充分に締め付
け可能だ。 基本手順としてはスレンダースレッドネジの先は食い込みやすいようナイフ状にそぎ込んであるからいきなり締
め付けることも可能だが材料によっては割れやすい事もあるので、そんな時には下穴をあけることで割れの防止が出来る。
使用するネジの長さは上の板の厚みの3倍になる。 その理由はスレンダ
ースレッドネジの上側1/3はネジが切れていないため、上の板にはネジが
食い込むこまず、最大の締結力が発揮されるからだ。(左の図の右側)
これに対し全ネジとなっているタッピングネジでは下穴をあけないと完全な
締結力を発揮できない。(左の図の左側)
同様なことは上の板厚の3倍以下のネジを使ったときにも起きるので、その
場合には下穴が必要になることがある。
これらスレンダースレッドネジは50、100、200本入りのパッケージで、
こちらからお求めになれます。
またケース入りのお買い得なセット品をこちらからお求めいただけます。
3.日曜大工における釘の使用
随分継子扱いされている釘なのだが、私の日曜大工において隠し釘と仮釘の2種類は重要な目的でかなり登場の機会が多
い。 その目的とは圧着保持と位置決めにある。
別項で述べているが、木材と木材を締結する方法のひとつとして重要な木工ボンドによる接着は、接着剤が完全に硬化する
までの圧着保持が非常に重要だ。 板厚が12mm以上あればスレンダースレッドネジを使って締結と圧着保持両方を満足さ
せられるが、12mm以下の厚みになった場合はクランプやハタ金に圧着保持を頼らざるを得なくなる。
しかし沢山の接着個所がある場合それに応じてクランプ、ハタ金が必要になりこの負担は決してバカにならない。 その替わ
りを勤めるのが隠し釘や仮釘で、前者は12mm以下、後者は5mm以下の板厚での使用が目安になる。
隠し釘では使用後には頭を折ってしまうが通常の釘よりも遥かに細いのでその跡は目立ちにくい。 仮釘に至っては使用後は
抜いてしまうのでごく小さな穴が残る程度だ。
もうひとつの目的の位置決めは私が編み出した使い方で木工ボンドでの接着位置の精度を上げるために隠し釘や仮釘を使う
方法だ。 この場合は釘の締結力は使わないのでかなり厚い板にも使える。 方法としては接合位置に隠し釘/仮釘を打ち込
みその先端を1mm程度出しておく。 そして木工ボンドを塗った接合面に当てて接合位置調整を充分確認した上で、板を押し
てやると釘の先端が刺さりこむ。 その後釘を打ち込んでからネジ締めやクランプで圧着すれば、ぬるっと横滑りして接合位置
がずれることは全くなくなる。
この効果と精度は想像以上に高く、通常の釘では先端が充分に細くないので遠く及ばない。
註): これら隠し釘/仮釘は50、100本入りのパッケージで、こちらからお求めになれます。
註): またケース入りのお買い得なセット品をこちらからお求めいただけます。
4.日曜大工におけるボルトの使用
木工が中心の日曜大工でボルトを必要とする機会は少ないが、それでもボルト締めとしたい構造は皆無とはいえない。
その目的としては、
1.ネジを締めたり緩めたりすることが何度も発生する部分への使用。
2.や締結力をぐっと高めたい場合。
の2つである。 木ネジは単価が安いのがメリットだが雌ネジとして木材自身が使われるため締める/緩めるを繰り返すことに
より、雌ネジ部分が崩れて雌ネジとしての機能を果たさなくなる。(バカになった状態。) 同様に締結力を高める過ぎると雌
ネジ部分が破壊したりネジの頭が埋まりこんでしまいこれも具合が悪い。
従ってこれらの場合には木工と言えども金属の雌ネジとなるボルトによる締結が必要になってくる。
実例を挙げると組立て式の家具、ブロック単位で製作し最後にそれらを連結して使う場合、スピーカーユニットの取り付けなど
が挙げられるが、雌ネジとして通常のナットではなく鬼目ナットや爪付ナットなどの特殊な雌ネジを使うことによりより完成度が
高まるし、雄ネジ側も頭が薄くコインでもネジ締めが可能で更にキャップを被せ装飾性に配慮した特殊ボルトの利用も検討して
みると良い。
註): 必要本数をリーズナブルな価格で購入可能なセットキャップボルト、専用キャップ、セットキャップナット、
鬼目ナット、爪付ナットなどをこちらからお求めになれます。
一口メモ: 釘・ネジの表面処理
釘、鉄の木ネジや釘は、鍍金(メッキ)や塗装、染色等で、装飾性と錆の発生を押さえる目的で表面処理されることが多い。
表面に露出する釘・ネジの場合には装飾性を重視し、ニッケルメッキ、クロームメッキ、銅メッキなどが施されたり、染色や塗装されたものが用いられる。
一方表面に露出しない場合には、錆の発生を防ぐ目的にのみ着目したクロメート処理(黄色や緑色が混合されたような外観を持つ)や、ユニクロ処理(青白い銀色の外観を持つが、衣料メーカーのユニクロとは全く関係ありません!!)がされた物が使用される。 このクロメートやユニクロは、鉄に亜鉛メッキを施した後でクロム酸クロームで化学的に耐蝕性の皮膜をつけたものであるが、クロム酸クローム成分の多いクロメート処理のほうが耐蝕性は高い。
しかしながらこれらの処理をしても、常に湿気にさらされるような環境では長期間の防錆効果は期待できない。 その意味では最も高価であるが、ステインレスネジが耐蝕性の点でベストである。 尚銅や真鍮も鉄よりは錆が出にくいが、これらの釘・ネジは強度的が鉄・ステインレスに及ばないため、装飾性重視の材料と考えたほうが良い。
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